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2008年12月28日(日) 22時51分

消える昭和を残したい 堺市の地裁堺支部庁舎を来年のカレンダーに産経新聞

 終戦後間もなく建設され、老朽化で来春の取り壊しが決まっている大阪地裁堺支部庁舎(堺市堺区)を、洋画家の岩本かずえさん(60)=同市西区=が、失われる昭和の姿を残そうと、自作の来年用カレンダー「堺スケッチ散歩」で紹介している。岩本さんは「威風堂々たる建物は昭和ロマンを感じさせる。消えてしまう庁舎の存在を残したかった」と話している。

 堺支部庁舎は54年前の29年5月に完成。全国の裁判所庁舎としては、福井地裁に次いで古い。高さ約23メートルの鉄筋コンクリート4階建て(1部5階建て)で、縦窓や玄関前の大きなひさしが特徴。

 官庁や民間の高層ビルに囲まれてレトロな風情を漂わせているほか、シーズンには庁舎前に植えられたサクラとの取り合わせが美しいと有名。専門家の間では「戦前の権威主義的なデザインを採り入れ、戦後の物資の乏しい時代に造られた立派な建物として価値が高い」などの評価もある。

 岩本さんは新人洋画家の登竜門「安井賞」で入選。堺市内で絵画教室を主宰し、堺市内の様子を描いた水彩画のスケッチ作品を数多く発表。「前を通る度に気になっていた」といい、今回冬の様子を水彩画で描き出した。

 カレンダーは月めくりで、路面電車など堺の風物の水彩画をあしらって1000部製作。岩本さんは「なくなる建物なので、カレンダーでは最後まで残るよう12月に使いました。また一つ、昭和がなくなるのは寂しいです」と話している。

 問い合わせは「ギャラリーいろはに」((電)072・232・1682)。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081228-00000565-san-soci