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2008年12月28日(日) 21時21分

報復呼ぶ「危険な賭け」 選挙前のハマス封じ目標中国新聞

 イスラエルがパレスチナ自治区ガザからのロケット弾攻撃を理由に、強硬派ハマスの拠点に対して空前の大規模空爆に踏み切った。約六週間後の総選挙を前に、有利な条件で停戦に持ち込むという軍事、政治両面の成果を狙ったとみられるが、報復の連鎖に陥りかねない「危険な賭け」でもある。

 「イスラエルはガザ地区から撤退したが、引き換えに得たのはロケット弾攻撃というテロだった」。イスラエルのリブニ外相は空爆開始から間もない二十七日夕、外国メディアに攻撃の正当性を力説した。

 イスラエルのガザ政策は誤算の連続だった。

 シャロン前首相は二〇〇五年九月、ガザから全入植地を撤去し、軍を撤退。しかし、パレスチナ指導部と交渉しない一方的な撤退は「武装闘争の勝利」と主張するハマスを伸長させ、〇六年のパレスチナ評議会(議会)選挙でハマスの圧勝を招いた。

 ハマスや他の武装勢力は、イスラエルがガザ境界を管理して「占領」が続いているとして、ロケット弾や迫撃弾による「闘争」を拡大、ことし一月からの発射数は約三千発に上る。イスラエル人の多くはガザ撤退が「失敗だった」とみており、シャロン氏が創設し、現在はリブニ氏が党首を務める与党カディマの支持率低迷の一因となってきた。

 ロケット弾は、境界をコンクリート壁で囲まれたガザの武装勢力にとって数少ない「闘争」手段だ。大半は空き地に落下するが、車や住宅を直撃すれば死者も出る。ガザ周辺に住むイスラエル人の恐怖感は大きい。

 運搬が容易なロケット弾の発射を完全に止めるにはガザを再占領するしかないが、軍兵士やガザの一般住民に多くの犠牲者が出る。そこで、リブニ氏ら与党指導部が選択したのが、ハマスに標的を絞った大規模攻撃だ。

 イスラエルの軍事評論家は「ハマスの攻撃に圧倒的な武力で報復し、イスラエルに有利な条件で選挙前に停戦に持ち込む戦略」と解説する。

 ただ、最新鋭兵器を誇るイスラエルは〇四年に当時のハマス指導者ヤシン師、ランティシ氏を相次いで殺害したが、ハマスは弱体化せず、イスラエル攻撃も止まらなかった。パレスチナ穏健派ファタハ幹部のアリカット氏は二十七日、「軍事手段は解決にならない」と警告した。

 一方、シリア在住のハマス指導者マシャル氏は「第三次インティファーダ(反イスラエル闘争)」を呼び掛けた。ヨルダン川西岸や東エルサレムでは二十七日、抗議のパレスチナ人がイスラエル治安部隊と衝突するなどパレスチナ全体で緊張が高まっている。(エルサレム共同=長谷川健司)

http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp200812280246.html