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2008年12月28日(日) 02時34分

<軽症救急患者>15病院で特別料金毎日新聞

 夜間や休日の「軽症救急患者」から「特別料金」を徴収する病院が増えている。1000円未満から8000円以上まで多様だが、健康保険の対象外で患者が直接払う。緊急性のない患者を減らして医師の負担を軽くし、重症者の治療時間を増やすのが狙いだ。一方で重症者も受診を控える懸念があり、「貧富で医療に差がつく」との疑問もある。このため幼児から徴収しないなどの配慮も出ている。【渋江千春、日野行介、高木昭午】

 毎日新聞の取材では、08年中に特別料金を導入した病院と、来年の導入を決めた病院が全国で14カ所あった。他に06年に導入した病院が1カ所、導入予定だが時期未定の病院が2カ所ある=表。

 12月から3990円を取っている前橋赤十字病院は「軽症者の増加で、重症の患者を断る率が増えたため」と説明する。一方で病院の収入は年間1億円程度減る見通しだ。3990円では、従来なら健康保険から受けていた時間外料金より安い場合もあり、患者減も見込まれるためという。

 他の病院も事情は同様で、減収覚悟で医師の負担減を目指す。

 導入で患者が減ることも確かだ。徳島赤十字病院は08年11月の時間外救急患者が約1500人。07年11月より4割減った。

 埼玉医大総合医療センターは昨秋、8400円の徴収計画を公表した。徴収を始めないのに患者が約3割減った。同大は当面、徴収開始を見送っている。

 ただ、同大では08年1月に、夜に高熱が出たが来院せず、朝になって入院した子どもが2人いた。手遅れにならずに済んだが、いずれも親が「夜はお金(特別料金)を取られる」と誤解していた。

 岡山赤十字病院は、重症者の受診遅れを心配し、自分で病状を訴えられない6歳未満からは、特別料金を取らないことにした。患者には「診察して緊急だと分かれば、取らない」と話し、受診を過剰に控えないでと呼びかけている。

 ◇山本保博・日本救急医学会代表理事の話

 軽症患者があふれて医療現場が苦しい状況は理解できる。しかし、貧富の区別なくだれもが良質の医療を受けられる、という日本の保険制度から外れるやり方ではないか。重症度の判断は医師でも難しい。特別料金制度を導入した病院は、運用を慎重にしてほしい。

 ◇軽症の救急患者から「時間外特別料金」を徴収する病院◇

病院名         徴収開始 金額(円) 徴収しない例など

いわき市立常磐(福島県)09年4月 2625    今後検討する

いわき市立総合磐城共立 09年4月 2625    今後検討する

山形大(山形県)    08年6月 8400    緊急処置が必要なら

米沢市立(山形県)   08年11月 3000    緊急処置が必要なら

群馬大(群馬県)    08年12月 4200

前橋赤十字(群馬県)  08年12月 3990  ぜんそく発作、難病など

磐田市立総合(静岡県) 06年11月 650〜4800

焼津市立総合(静岡県) 08年4月 650〜4800 6歳未満や生活保護

榛原総合(静岡県)   08年6月 650〜4800 

島田市民(静岡県)   08年5月 650〜4800 未就学児

藤枝市立総合(静岡県) 08年5月 650〜4800 未就学児とけいれん発作、            ぜんそく発作、医療費公費負担の身体障害者など

山田赤十字(三重県)  08年4月 5250

公立豊岡(兵庫県)   08年12月 3150    外傷、1歳未満、精神疾患

岡山赤十字(岡山県)  08年12月 3150    6歳未満、生活保護

徳島赤十字(徳島県)  08年4月 3150

埼玉医大総合医療センター 未定  8400(検討中) 

福島県立医大(福島県)  未定  890〜7300 徴収条件の決定が難航中

※表の金額とは別に「特定初診料」を徴収する病院もある

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081228-00000009-mai-soci