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2008年12月28日(日) 17時49分

ガザ空爆 オバマ氏 就任早々から試練に直面産経新聞

 【ワシントン=有元隆志】イスラエルとパレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織ハマスとの対立が激化したことで、今年末までの中東和平実現を目指したブッシュ米政権の中東外交は最悪の結末を迎えることとなった。オバマ次期米大統領は大きな難題を引き継ぐこととなる。

 ライス国務長官は27日、暴力のエスカレートに「深い懸念」を示しつつも、停戦合意に違反してイスラエルへのロケット弾攻撃を続けたハマスに「暴力の再燃を招いた責任がある」として、ハマスを一方的に強く非難する声明を出した。

 ブッシュ政権はテロ組織と位置づけるハマスとの対話を拒否し、ヨルダン川西岸を支配するパレスチナ自治政府のアッバス議長とイスラエル側との対話を促進してきた。昨年11月にはワシントン近郊のアナポリスで、中東和平国際会議を開催し、2008年末までの和平協定締結を目指し、7年半ぶりの交渉再開で合意した。

 ライス長官はシャトル外交を展開し、ブッシュ大統領も1月にイスラエル、パレスチナを訪問したものの、交渉は進展しなかった。今回のイスラエルの大規模空爆で、和平実現はさらに遠のくこととなった。

 ハワイで休暇中のオバマ氏は、ライス長官と電話会談するなど、政権側から状況の説明を受けたが、報道担当者は「大統領は1人だ」として、空爆についてコメントはしなかった。

 イスラム諸国との関係改善に意欲を示し、敵対国家との対話方針を掲げるオバマ氏だが、就任してもハマスとの対話促進にカジを切る可能性は低いとみられている。

 オバマ氏は7月、停戦合意後も連日、ガザ地区側から発射されたロケット弾が着弾していたイスラエルの町スデロトを訪れた。オバマ氏は「自分の2人の娘が夜寝ているところに、ロケットを発射されたら、やめさせるためにできることはすべてやるだろう。イスラエルも同様のことをすると思う」と述べ、イスラエル寄りの立場を明確にした。

 オバマ氏は政権発足直後から、ビッグスリー(3大自動車メーカー)の救済問題や、イラクとアフガニスタンでの2つの戦争に取り組むことになるが、これに中東情勢も加わることになる。今後、報復合戦が続けば、アラブ社会を中心に米国に対して、イスラエルに圧力をかけるよう求める声が増すことも予想される。オバマ氏にとっては就任早々から外交手腕が試されることになりそうだ。

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