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2008年12月28日(日) 01時11分

<ガザ空爆>また泥沼、報復連鎖毎日新聞

 【エルサレム前田英司】ガザ全域で一斉に爆撃音がとどろき、次々と立ち上る黒煙の下に惨状が広がった−−。パレスチナ自治区ガザ地区に対する27日のイスラエル軍の空爆は、50カ所もの標的を同時に狙った近年例を見ない大規模攻撃となった。イスラム原理主義組織ハマスが支配する同地からのロケット弾攻撃に業を煮やしたイスラエル政府は、来年2月の総選挙を前に、国内世論への対応を優先する形で強烈な軍事作戦に打って出た。

 「我慢は限界に達している。もうたくさんだ」。イスラエルのリブニ外相は25日、カイロでムバラク・エジプト大統領らと会談した後、ガザからのロケット弾攻撃に怒りをぶちまけた。エジプトは再度、イスラエルに停戦仲介の用意を伝え、自制を促したが、リブニ外相は「現状を見過ごすことはできない」と報復攻撃強化の意向を示唆していた。

 イスラエル政府を率いる中道右派カディマは来年2月の総選挙を前に、ロケット弾攻撃の阻止を求める世論から「及び腰だ」と厳しく批判されてきた。対パレスチナ強硬派の最大野党リクードが支持率を伸ばすなか、最近では和平推進派の左派政党メレツでさえ「ガザ攻撃やむなし」と主張する状況だった。

 こうした国内事情に加え、民間人を巻き込む恐れのある大規模軍事作戦に歯止めをかけてきたブッシュ米政権が来月20日、任期切れとを迎えるタイミングでもあった。外交努力を重視するオバマ新政権発足直後の攻撃は対米関係にひびを入れかねないだけに、政権移行期の間隙(かんげき)を狙った可能性もある。

 イスラエル政府は多大な犠牲が予想される陸上部隊によるガザ侵攻には慎重で、まずは空爆によってハマスの拠点を一斉に破壊する作戦に出た。空爆前には、イスラエル政府が28日の閣議で軍事作戦の準備状況などを検討するため、同日以前の攻撃開始はないと伝えられていた。ハマス側は予想外の攻撃で虚を突かれた格好だ。

 ロイター通信によると、ハマス報道官は「敵(イスラエル)に決して忘れられない教訓(報復)を示してやる」と宣言。イスラエル側はガザ北部のロケット弾発射陣地への攻撃を強化する一方、同地に隣接する自国領の住民にロケット弾攻撃に対する一層の警戒を呼びかけている。

 ◇ハマス

 イスラム教スンニ派の原理主義組織で対イスラエル強硬派。イスラエル占領下のガザ地区で抵抗闘争が始まった87年、エジプトの「ムスリム同胞団」の流れをくみ故ヤシン師が創設した。06年1月のパレスチナ評議会選挙で圧勝。07年6月に対立する穏健派ファタハを武力で放逐し、ガザ全域を支配した。

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