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2008年12月28日(日) 09時18分

米、核兵器20発分搬出 日本の研究用原子炉から中国新聞

 核物質のテロ組織などへの拡散を警戒する米政府が一九九六年から今年夏までに、京都大や日本原子力研究開発機構(本部・茨城県東海村)が保有する研究用原子炉から、核兵器約二十発分に相当する高濃縮ウラン計五七九・七キロを搬出、米国へ移送していたことが二十七日分かった。米核安全保障局(NNSA)高官や日本側関係者が明らかにした。

 冷戦時代に原子力の平和利用を促進した米国から日本に輸出された研究炉用の高濃縮ウランが、核テロなどに利用されるのを防ぐため徐々に米国に返還されていたことは一部関係者に知られていたが、返還総量や事業の全容が判明したのは初めて。

 これで日本にあった主要研究炉から、ほぼすべての高濃縮ウランが回収された。核不拡散を重視するオバマ次期米政権も核テロ対策強化のため、主要研究炉以外の小型研究炉に残る高濃縮ウランの保全を日本側に促していくとみられる。

 米政府の核不拡散事業「地球的規模脅威削減イニシアチブ(GTRI)」を主宰するビニアウスキNNSA副局長補によると、米国は冷戦後、テロリストや第三国への核物質の拡散を恐れ、世界に点在する研究用の高濃縮ウラン燃料の回収に着手。九六年以降、作業を本格化させ、使用済み高濃縮ウランを日本から米国に移送して核研究施設内に保全した。

 さらに高濃縮ウランを除去した日本原子力研究開発機構の四炉のうち、二つについて低濃縮ウランを燃料とする原子炉に転換、残る二つを閉鎖した。京都大の一炉も来年夏までに低濃縮ウラン型炉に転換の予定。

 同機構と京都大、東京大、近畿大が保有する計四つの小型炉には高濃縮ウランが残っており、日本側関係者によると、NNSAが一部施設の現地調査を既に実施した。

 NNSAは二〇一二年までに残る十数キロの高濃縮ウランを日本から搬出する予定。一部小型炉は低濃縮ウラン型炉への転換が技術的に不可能なため、一部の高濃縮ウラン燃料が日本に残る見通しだ。(共同=太田昌克)

http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp200812280086.html