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2008年12月28日(日) 08時03分

飲酒運転防止 「飲み過ぎ文化」転換を インストラクター養成/職場や地域で指導産経新聞

 忘年会や新年会で酒を飲む機会が増えるこの時期、「飲酒運転防止インストラクター」が各地で活躍している。アルコールの正しい知識を広め、飲酒習慣の改善につなげようと、NPO法人「ASK(アルコール薬物問題全国市民協会)」が、今春から養成を開始。飲酒運転撲滅に向け、職場や地域での活動に期待が高まっている。(中曽根聖子)

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 以前から飲酒運転の予防教育に力を入れてきたASKが、インストラクターの養成に乗り出したのは今年4月。道路交通法改正などで厳罰化が進んでも、飲酒運転による悲惨な事故が後を絶たないことから、日本損害保険協会の助成を受け、「3年間で1000人」を目標に始めた。

 元JRバス関東会長でASK飲酒運転対策特別委員会委員長の山村陽一さんは「罰則や懲戒処分だけでは長年の習慣や考え方は変わらない。飲酒運転の予防と撲滅には、アルコールに関する幅広い知識を身につけ、酒の飲み方、やめ方を指導する人が職場や地域に必要」と説明する。初年度の講座にはバスやトラック業界などの運輸、医療関係者、自治体の総務担当者ら約370人が応募。すでに20人を超えるインストラクターが各地に誕生している。

 講座のプログラムは全部で3段階。第1ステップは通信教育で、飲酒による身体や運転への影響、飲酒習慣を変える具体的ノウハウなどについて学ぶ。第2ステップは各地で行われる講習会を受講。ここでは「寝酒の落とし穴と飲酒のコツ」などをテーマにしたDVDを見たり、節酒につながる生活習慣の改善方法などについてグループで話し合う。最後に自分の職場や地域の人を対象にした実践研修を行い、その結果を報告したうえで認定を受ける。受講料は資料代込みで1万円だ。

 講師を務める山村さんは「前夜の深酒による二日酔い運転を避けるには、『アルコール1単位』が基本」と言う。ビール中瓶1本、あるいは日本酒1合分に当たるアルコール1単位(約20グラム)が体内から抜けるには最低4時間かかる。例えば、忘年会で日本酒を3合飲めば12時間かかり、さらに年齢や体質、その日の体調によっても異なる。だが、「一晩寝たから」「シャワーを浴びて気分がさっぱりしたから大丈夫」と誤解している人は多いという。

 インストラクターの認定を受けた広島県福山市の小学校教頭、小畠八重さんは早速、職場の忘年会を前に講座で学んだノウハウを実践。「おれの酒が飲めないのか」といった言葉がアルハラ(アルコールによる嫌がらせ)につながることや、酒の上手な断り方などを伝授した。

 同市内の教頭が昨年、飲酒運転で懲戒処分を受けたことが受講のきっかけ。「他人ごとではない」とショックを受けた小畠さんは「教員仲間や子供の保護者らに飲酒運転の危険性や酒との付き合い方を伝えていきたい」と意気込む。

 「アルコール依存症患者の治療プログラムにもかかわり、飲酒問題の深刻さは認識していたのに、アルコールが体内で分解されるまで思った以上に時間がかかるなどアルコールに関する情報は知らないことばかりだった」

 北海道岩見沢市の空知(そらち)病院に勤務する精神保健福祉士、桑内崇さんは受講の感想をこう漏らす。インストラクターとして今後、地元のソーシャルワーカーらとともに知識を深め、地域住民への普及啓発も進めたいという。

 山村さんは「そもそも飲酒運転は多量飲酒に寛容な日本人の『飲み過ぎ文化』が一因。飲み放題の宴席が多い忘・新年会は、酒を飲まなくても楽しめる工夫が必要では」と話している。

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