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2008年12月28日(日) 08時02分

ボルト・ダンスの父、射殺される…ジャマイカ超人気ダンサー、アレクサンダー・スミス氏スポーツ報知

 北京五輪陸上男子百メートル、二百メートルをともに世界新記録で制したジャマイカのウサイン・ボルト選手(22)がレース後に見せたダンスを振り付けた、デービッド・アレクサンダー・スミス氏(36)が26日、同国の首都キングストンのバーで射殺された。ダンサーとして「アイス」の愛称で知られたスミス氏が考案した踊りは、ボルトもお気に入りで二百メートルを制した後、軽快なステップで披露していた。

 北京五輪で世界新を打ち立てた後に「サンダーボルト」が見せた、つま先立ちでひざを曲げてクネクネ踊る勝利のダンス「ガリー・クリーパ」を考案した名ダンサーが射殺される事件が起きた。

 地元紙などによると、26日午前8時頃、恋人と一緒にいたスミス氏は、タバコを買うために入店したキングストン市内のバーで射殺された。店内で犯行グループの2人組と口論になり、殴られた直後に銃撃された。頭と胸の2か所を撃たれて即死。犯行グループがスミス氏のレンタカーで逃走したため、警察は強盗とみている。

 クールな身のこなしから「アイス」の異名を誇っていたスミス氏は、「レゲエの発祥地として知られるジャマイカで最も有名な振付師のひとり」(ジャマイカに詳しい関係者)といわれる人気者。同氏が考案した「ガリー・クリーパ」は、人気ダンスユニット「エレファントマン」が披露し、同国内で爆発的な人気を呼んだ。

 陽気な性格で、レース後に「勝利の舞」を踊ることが通例になっているボルトもこのダンスを気に入り、全世界が見つめる五輪での“勝負ダンス”に採用。19秒30の世界新記録で制した二百メートル決勝の後に、ジャマイカ国旗を肩にかけながら、披露した。

 カリスマ振付師の死にジャマイカでは衝撃が広がっている。60年代後半のボブ・マーリーの登場でレゲエ文化を確立した同国は世界有数の犯罪多発国としても知られている。今年も1500人以上(日本の約60倍)が殺人事件の被害者になった。

 スミス氏が所属する舞踏集団「ブラックローゼス」でも、05年1月に「ボーグル」の通称で知られる名ダンサーだったジェラルド・レビー氏がガソリンスタンドで銃撃を受け、死亡する事件が起きている。

 ◆ジャマイカ カリブ海の島国。首都キングストン。人口は約270万人で黒人が約9割を占める。公用語は英語。主要産業はコーヒーなど農業。「ブルーマウンテン」は高級コーヒーとして有名。1人当たりの国民総所得は約3500ドル(約32万円)で、日本の1割にも満たない。殺人発生件数は日本の約60倍。2007年の被害者は1574人で史上2番目の多さだった。1962年、カリブ海の英植民地の中で最初に独立した。60年代から発展したレゲエが世界に広がった。ボブ・マーリーが世界的に有名。短距離が強く、北京五輪では陸上のボルト選手が100メートル、200メートルで優勝するなど、ジャマイカ勢が旋風を巻き起こした。

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