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2008年12月28日(日) 08時01分

ガザ空爆 報復合戦“悪夢再び” ハマス、強硬路線裏目産経新聞

 【カイロ=村上大介】イスラエル軍が27日、パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織ハマスを標的とした大規模な空爆を行い、約200人の死者を出したことは、ハマス側の予想をも大きく超えた被害だったとみられる。ハマスはイスラエルとの停戦延長を拒否し、ロケット弾攻撃を激化させていた。イスラエルの反撃を誘い、逆にイスラエルによるガザ地区封鎖の“非人道性”を国際社会に訴えることを狙っていたようだ。だが“想定以上”の被害により、ハマスはイスラエルとの報復合戦を激化させる必要がでてきた。

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 エジプトが仲介したハマスとイスラエルの停戦は今月19日に失効した。ハマス側が「イスラエルが停戦合意に違反してガザ地区に対する封鎖をほとんど緩和しなかった」として、停戦延長を拒否したためだ。実際、イスラエルはさまざまな“口実”を設け、実質的な封鎖緩和措置は取らず、ハマスだけでなく仲介者のエジプト政府も失望させた。結局、医薬品や食糧など生活必需品の不足は続き、国連や欧州連合(EU)もガザ住民の生活困窮に強い人道上の懸念を示す状況になっていた。

 停戦の失効に伴い、ハマス武装部門を中心としたガザの武装勢力は連日、ロケット弾をイスラエル領に撃ち込んでいた。戦闘状況を悪化させることで、次の「停戦」に向けて国際社会の介入を呼び込み、「封鎖解除の徹底」などハマス側の求める条件を交渉に反映させたいとの狙いがあったとみられる。

 イスラエルの総選挙が2月に予定されていることから、ハマスは投票日近くまで戦闘を長引かせ、戦闘が続く中で投票日を迎えたくないイスラエル中道右派の与党、カディマから譲歩を引き出せると計算したとの指摘もある。世論調査によると対パレスチナ強硬派の右派リクードとカディマの支持率は拮抗(きっこう)しており、戦闘が長引けば国内世論は右に振れ、リクードに有利に働く可能性があるからだ。

 こうしたハマスの狙いを読んだカディマと、連立与党の中道左派・労働党は激しい反撃に出ることで、「次の停戦交渉でも決して妥協はしない」との姿勢を明確にしたものとみられる。

 ただ、攻撃の犠牲者が大規模であったことから、パレスチナやアラブ世界の「反イスラエル世論」が沸騰し、ハマスは当面、武力衝突を激化させざるを得なくなったばかりか、逆にハマスのアラブ世論内での政治的立場を強める可能性もある。自爆テロ再開も含めて、状況が双方の思惑を超えて制御不能の事態に陥る可能性も否定はできない。

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