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2008年12月27日(土) 11時38分

<モカ>店頭から姿消す? エチオピア産に残留農薬で在庫減毎日新聞

 コーヒー好きに人気の「モカ」に異変が起きている。夏ごろから、大手コーヒーチェーンや家庭用レギュラーコーヒーから次第に姿を消しているのだ。どうしたのか、モカ。【川口雅浩】

 UCC上島珈琲(本社・神戸市)は7月中旬から、家庭用レギュラーコーヒー「モカブレンド」の販売を休止した。ドトールコーヒー(同・東京都渋谷区)が全国展開する喫茶チェーン「ドトールコーヒーショップ」なども、ストレートのモカの販売をやめた。ドトールは「モカブレンド」のコーヒー豆を一部で販売しているが「モカの在庫がなくなり次第休止する」という。

 原因はエチオピア産コーヒー豆(代表銘柄はモカ・ハラー)だ。厚生労働省はコーヒー生豆の輸入時に、食品衛生法に基づき検査をしているが、今年4月、エチオピアモカから有機塩素系農薬のリンデンなど基準を超える殺虫剤の成分が見つかった。中には基準値の100倍を超える豆もあった。厚労省は「100倍のコーヒーを毎日飲んでも直ちに健康への影響は考えられない」というが、安全のため基準は厳しく設定されている。

 5月以降も残留農薬が検出される豆が続出し、大手商社の多くは輸入を停止した。全日本コーヒー協会が6月に実施した現地調査では、収穫前の豆に問題はなく、輸送用の麻袋に殺虫剤が付着している可能性が高まったが、原因は特定できていない。厚労省はエチオピア政府に原因究明と再発防止を求めているが、進展はない。

 エチオピアにとって、日本はドイツに次ぐ第2位のコーヒー豆の輸出先だが、欧州連合(EU)の残留農薬基準は日本より緩いため、エチオピアはドイツなど欧州への輸出を増やしているという。日本の輸入業者は8月以降、残留農薬のない07年産のエチオピアモカの在庫をドイツなどから輸入しているが、11月は前年の2931トンに対して54トンしか輸入できず、極端な供給不足が続いている。

 コーヒー専門店には在庫のエチオピアモカを提供する店もあるが、東京都港区の大坊珈琲店は「早晩なくなるかもしれず、エチオピアモカ抜きでもブレンドコーヒーの味が変わらないよう研究している」という。

 一方、イエメン産(代表銘柄はモカ・マタリ)の輸入は通常通り続いているが、輸入量が年間約400トンとエチオピアモカ(07年は2万9300トン)に比べ少なく、入手が難しい。東京都新宿区のコーヒー豆販売店「緑の豆」は「エチオピアモカは取引先から今も入手できるが、イエメンモカは6月ごろから入手できない」と話す。

 1961年に西田佐知子さんが歌ってヒットした「コーヒー・ルンバ」に出てくるなど、モカはファンが多い。両国産とも豆の奪い合いとなり、卸値は昨年の1キロ約500円から約800円に上昇した。「地方の喫茶店ほど入手は困難で悲鳴が聞こえる」(業界関係者)。喫茶店では「目立った値上げは少ない」というが、東京都内ではモカの豆の販売を100グラム400円から、8月に450円に4年ぶりに値上げしたところもある。

 【ことば】モカ・コーヒー

 かつてイエメンの港町モカから積み出されたイエメン産とエチオピア産のコーヒー豆の総称。独特の香りと酸味が特徴。エチオピアからのコーヒー豆の輸入量(07年)はブラジル、コロンビア、インドネシアなどに次ぎ5位。

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