記事登録
2008年12月27日(土) 21時32分

ガス版OPEC発足 露の野望警戒、結束に乱れ中国新聞

 ロシア、イラン、カタールなど天然ガス輸出国でつくる「ガス輸出国フォーラム」が二十三日、規約を採択し十一カ国による常設機構に生まれ変わった。ただ、世界最大のガス埋蔵量、生産量を誇るロシアが新機構を欧米に対抗する強力な外交カードとして利用しようとする野望への懸念も表面化し、結束に早くも乱れが見られる。新機構をガス版の石油輸出国機構(OPEC)に見立てる消費国側が警戒するガス価格支配の実現には、課題も多い。

 「不要で有害な市場競争は協調で防げる」(イランのノーザリ石油相)。「OPECと同様の原則に基づく強固な組織をつくるべきだ」(ベネズエラのラミレス・エネルギー石油相)。モスクワでの同日の閣僚級会合で、反米諸国が価格支配への意欲を示唆。ロシアのプーチン首相は「安価なガスの時代は終わりつつある」と宣言した。

 天然ガスの国際取引は長期契約に基づくパイプライン輸送が主流で、原油のように生産量を機動的に増減して価格操作するのは困難とされる。

 だが、プーチン首相は「ガス市場は(石油と同様、タンカーで輸送可能な)液化天然ガス(LNG)取引が増え、グローバル化の構造変化が起きており、LNGは世界のエネルギー需給の調節に影響を及ぼすことになる」と、将来的な価格調整実現の可能性に期待感をにじませた。

 天然ガスは地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)の排出量が石油に比べて少ないエネルギー源として今後、需要増が見込まれる。

 規約を採択した十一カ国とオブザーバー参加の二カ国の天然ガス埋蔵量合計は、世界全体の七割を占める。ロシア産ガスへの依存度が高い欧州は神経をとがらせる。年明けにロシア・サハリン州から天然ガス輸入を本格化させる日本にとっても、人ごとではない。

 会合ではOPEC加盟国でもあるガス生産国から、ロシアへの不満も噴出した。OPECに非加盟で、世界二位の産油国ロシアが原油減産の痛みを分かち合わず、価格維持の恩恵だけを受けているとの不信が根強い。リビア国営石油会社のガネム総裁は「われわれはロシアの原油減産表明を待っている。それが(原油価格に連動する)ガス価格を支えることにもなる」とくぎを刺した。

 カタール、エジプトなど親米派には、露骨な反欧米路線への警戒感も強いとみられる。アラブ首長国連邦やインドネシアなどが閣僚出席を見送ったのも、「欧米を刺激しないよう当面、様子を見ることにした」と分析する専門家もいる。

 ロシアはフォーラムの主導権獲得を狙い、事務局をサンクトペテルブルクに誘致しようと働き掛けた。しかし、投票の結果、一票差でカタールのドーハに敗れた。(モスクワ共同=佐々木健)

http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp200812270265.html