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2008年12月27日(土) 23時35分

“金満経営”に激震 金融危機でクラブ身売り話続出産経新聞

 「世界最高のリーグ」と羨望(せんぼう)を集めてきたサッカーのイングランド・プレミアリーグに激震が走っている。世界的な金融危機で資金繰りがつかなくなり、経営難に陥ったクラブの身売り話が続出。クラブ世界一に輝いたマンチェスター・ユナイテッド(マンU)も高金利の借金にあえぐ。外資導入で世界中のスター選手をかき集めて急成長した“黄金リーグ”は今、オーナー資格の見直しを検討するなど岐路に立たされている。(ロンドン 木村正人)

 横浜市の日産スタジアムで行われたクラブワールドカップ(W杯)決勝(21日)で、欧州代表のマンUは南米代表のリガ・デ・キト(エクアドル)を1−0で破り、世界の頂点に立った。しかし、栄光を支えるマンUの台所事情は決して楽ではない。

 マンUは2005年に米実業家に買収されたとき、負債ゼロの黒字経営だった。その後、選手の大型補強が相次ぎ、クラブ収入も3割増えたものの、ギルCEO(最高経営責任者)は本紙に「クラブの有利子負債は700億円」と打ち明けた。英紙によると、一部の返済利息は14.25%に達しており、昨年77億円の損失を出した。「いい話があれば、米実業家は売却する可能性がある」(サッカー評論家)という。

 同リーグのスクードモーCEOは10月の会合で「リーグの収入と負債はほぼ同額で、3300億〜3400億円」と述べ、年収と負債が1対1なら健全経営との基準を示した。しかし、金融危機は“金満オーナー”の懐を直撃している。

 英BBC放送は、ウェストハムが売却される可能性があると報じた。2年前に同クラブを買収したアイスランド人のグズムンドソン氏はアイスランド政府によって国有化されたランズバンキ銀行のオーナー。スポンサー企業の倒産もあり、資金繰りに窮している。

 チェルシーのオーナーでロシア人大富豪のアブラモビッチ氏も保有株が急落、資産価値が約2兆円減ったと伝えられた。同氏がスポンサーの国際親善サッカー大会が中止に追い込まれたばかりで、チェルシーへの影響を心配する声も。

 エバートンやニューカッスルは売りに出されたが、買い手がなかなか見つからない。英高級百貨店ハロッズの経営者アルファイド氏が所有するフラムや、ポーツマスなどの身売り話も飛び交う。新スタジアム建設を中断したリバプールは、景気後退入りを考慮してホーム試合入場料の値下げに踏み切った。

 同リーグが誕生する直前の1992年に、旧リーグで最後の優勝を果たしたリーズ・ユナイテッドは現在3部。金満補強のツケがたたって有力選手を放出、成績低迷、赤字転落という悪循環に陥ったのが原因だ。

 借金依存度が高いプレミアリーグに比べ、「クラブ以上の存在」を目指し世界14万人の会費で運営するバルセロナが所属するスペインリーグや、一般会員の出資比率を51%と定めているブンデスリーガ(ドイツ)のクラブは、金融危機下でも経営が安定している。

 これに対し、イングランドサッカー協会(FA)はオーナーが“金満経営”に走らないよう資格審査の強化を求めており、バーンハム英文化・メディア・スポーツ相もサッカーの振興を図る立場から規制を検討する考えを示している。

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