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2008年12月27日(土) 22時05分

不況で財布のヒモ固く 不安と期待が交錯するアメ横産経新聞

 先が見えない不況のなかで、年の瀬を迎えた日本列島。年末年始の買い物にも財布のヒモは固い。食材や洋品、化粧品などがズラリと並び、年末の混雑ぶりで知られる東京・上野のアメヤ横丁(アメ横)も例外ではなく、「円高のうまみも味わっていない」。それでも「正月はいいものを買い、きちんと迎えたい」と来年に望みをつなぐ買い物客も少なくない。年末年始の休暇が始まった27日、不安と期待が交錯するアメ横を歩いた。(今泉有美子)

 「はーい、いらっしゃい、いらっしゃい」

 アメ横は例年の年末のように食材を求める客であふれ、威勢のいい呼び込みの声が飛び交っていた。マグロやカニ、イクラ、かまぼこ…。売れている商品は相変わらずだが、ここにも不況の波が押し寄せる。

 海産物や加工食品を扱う店の男性従業員(46)は「正月が近いのに、今年のお客さんは余計なものを一切買わない」とため息。タラコやかまぼこといった比較的低価格なものの売れ行きがいい半面、牛肉やマグロといった高級食材の売れ行きがあまりよくないという。

 海産物の小売店を経営する社長(61)も「財布のヒモが固い」と渋い顔。例年、この時期は高級なカニのセットや数の子の詰め合わせなどの贈答品が売れるが、今年は家庭用の小さいパックのイクラや安価なマグロの赤身など低価格商品が売れ筋だ。「形が崩れて値下げした数の子もよく売れている。以前は、おせち料理用に形が崩れた食材を買う人なんていなかったのに」とつぶやく。

 アメ横には輸入ブランドの洋品や雑貨、化粧品を扱う店も立ち並ぶ。

 年末年始の買い物客が集まるこの時期は輸入品を扱う店にとっても書き入れ時。特に今年は円高で輸入品は安くなっているはず。さぞや客が多いかと店を訪れると人影が少ない。

 アメ横で、30年以上にわたって高級ブランドのカバンなどを扱う店の男性店主(60)は「円高だからといって卸業者がすぐに安くしてくれることはない。ここ30年で、今年は一番最悪かも」と肩を落とす。

 少し離れた、輸入化粧品を扱う店の女性店員(65)も「いつもなら、この時期は両手にお魚の袋を持ったお客さんがこっちまで来るのに、今年は買い物袋を持った人が少ない」と暗い表情だ。

 とはいえ、人込みの活気は例年並みだ。「お正月が近づけば、高級食材がもう少し売れるかもしれない」と海産物店の男性従業員は期待する。

 埼玉県から買い物に来た主婦(75)は「年末は必ずアメ横。今年も数の子とエビと毛ガニを買った。予算も例年通り。不況ですが、正月はいいものを買わないと…」と話す。輸入品店の女性店員は「もうすぐ円高の影響が出てくるのでは」。来年に望みを託し、アメ横の年末は大みそかに向かってさらに活気を帯びていく。

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