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2008年12月27日(土) 21時05分

緊張高まる インド国境近くパキスタン軍2万人産経新聞

 【バンコク=菅沢崇】インド西部で発生したムンバイ同時テロの容疑者引き渡しをめぐり、同国とパキスタン間に緊張が高まる中、パキスタンは、インドとの国境沿いに2万人の兵力を移動した。インド軍による急襲を念頭に置いた予防的配備とみられる。だが、パキスタン軍の主導権が強まれば事態を深刻化させかねない懸念もはらんでいる。国境での兵力増強によって、米国が求めるテロ掃討作戦が手薄になる懸念も浮上しており、事態は予断を許さない。

 インド側は、ムンバイ同時テロをめぐってパキスタンのイスラム武装組織「ラシュカレトイバ」などの関与を指摘し、容疑者の引き渡しを求めている。だが、パキスタン側は、証拠がインド側から提示されればパキスタンの国内法に従って独自に事件を処理するとの姿勢を崩していない。

 両国間には、犯罪人引き渡し条約が締結されておらず、「インド側の不満は高まるばかりで、パキスタン側も圧力回避に躍起となっている」(観測筋)との見方が有力だ。

 パキスタンは、隣接するインドの圧倒的な通常兵力を歴史的に脅威としてとらえ、今回の兵力移動も、インド軍に進軍された場合、相当のダメージが予想される最大州パンジャブ州の古都ラホールを防備する形でカスル、シアルコット、などに配置したもようだ。

 軍高官はパキスタンの英字紙ドーンに対し、「国境付近の監視を強化のため、必要最小限の防衛措置をこうじた」と述べ、予防策の段階にあることを強調。北西部の部族地域からの軍部隊の移動については、攻撃能力のある特殊部隊を除いていると説明した。

 ただ、今回の兵力移動の背景には、陸軍出身のムシャラフ前大統領の時代と異なり、「ザルダリ大統領が軍との関係が希薄で、陸軍主導で配置が進められた可能性もある」(観測筋)。2002年にはカシミール地方で、両国の小競り合いからインド側75万、パキスタン側25万の兵力が集結。当時は、ムシャラフ氏の強い指導力のもと、一定の自制が働いたが、今回、事態の進展によっては、大統領が軍を掌握できず、武力衝突するという懸念もぬぐえない。

 パキスタンの外交筋は、「パキスタン軍は、アフガニスタンとの国境から兵士を移動しており、これ以上の移動は“テロとの戦い”に支障をきたす可能性がある。移動は緊張緩和に向けて米国の積極的な関与を求めるメッセージの意味合いもある」と指摘している。

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