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2008年12月27日(土) 07時32分

「被告に結核の恐れ」傍聴人にマスク配布、法廷前張り紙も読売新聞

 大阪地裁が、26日に判決があった窃盗事件の公判で、「被告に結核の恐れがある」と知らせる張り紙を法廷前に掲示し、傍聴人にマスクを配布、裁判官をのぞき、在廷した全員が着用した。

 ◆被告の同意なく病歴公表したことに◆

 初公判があった今月中旬にも同様の措置を取っていた。地裁は「感染の可能性は極めて低く、念のための措置」と説明しているが、被告の同意なく掲示しており、裁判とは無関係な病歴を公表したことになる。来年5月からは裁判員制度が始まり、多くの市民が裁判所を訪れる。感染防止か、被告のプライバシー保護か。裁判所は難しい対応を迫られそうだ。

 被告は60歳代の男性。飲食店でバッグを盗んだなどとして起訴、拘置中で、起訴事実を認めており、この日、実刑判決を受けた。

 地裁によると、大阪地検から今月、「被告は結核かもしれない。公判は開けるか」と問い合わせがあった。地検は病状について「結核菌を排出していない可能性が高く、他人にうつす恐れは極めて低い」と説明した。

 地裁は開廷を決め、初公判期日と判決公判のこの日、法廷の入り口に「被告は結核に感染している恐れがあります。傍聴者で希望の方にはマスクを配布します」と掲示。近くに被告名や罪名、公判の開始時間が書かれた開廷表も張り出した。

 この日の法廷には、飛沫(ひまつ)感染を防ぐため、証言台の前に透明のアクリル板を設置。被告がマスク姿だったほか、検事と弁護人、地裁職員2人、看守2人、傍聴人1人がマスクを着用した。

 裁判官だけは2回の公判を通じてマスクはしていなかった。その理由について、裁判官は「被告が着けていたし、自分の発言が聞き取りにくくなると思った」と説明しているという。

 地裁総務課は「開廷するかどうかや、どんな措置を講じるかは被告の病状を情報収集して検討した。今後も適切に対応したい」としている。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081227-00000005-yom-soci