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2008年12月27日(土) 18時28分

<印パ対立>テロ後、続く緊張…両国軍、国境集結も毎日新聞

 【ニューデリー栗田慎一】ムンバイ同時多発テロ事件をめぐる、インドとパキスタンの非難合戦がエスカレート。両国軍が国境へ兵士を集結させる動きを見せ、軍事的緊張が高まっている。両政府とも「戦争」の可能性には否定的で、核兵器を保有する両国軍の全面衝突という事態は考えられないが、今後、国境付近で小規模な交戦などが発生する恐れがある。

 ◇小規模交戦の恐れ

 「これが最後通告だ」。インドのムカジー外相は24日、パキスタン政府が「全過激派の撲滅」に乗り出さなければ、軍事行動を辞さないとの構えを示した。地元メディアは25日、同国西部ラジャスタン州のパキスタン国境に、軍の戦闘部隊2部隊5万人が配備されたと報じた。

 これに対しパキスタン軍幹部は、毎日新聞に「アフガニスタン国境で対テロ戦に当たる部隊約12万5000人の半数を、東側(インド国境側)に持っていく計画だ」と発言。インド国境に近い東部ラホール住民によると、市内を通過して東側に向かう軍部隊の長い車列が目撃された。カシミール地方での目撃情報もあり、各地の国境線へ分散しているとみられる。

 インドは当初、ムンバイ事件の実行組織を「パキスタン側カシミールの過激派組織ラシュカレ・タイバ」とした。だがパキスタンが同組織の最高指導者を軟禁したうえでインド側に「証拠の提示」を求めると、「パキスタンが自ら明らかにすべきだ」と主張。その後、「(パキスタン国内の)全過激派勢力の解体」へと要求をエスカレートさせた。

 インドの強硬姿勢の背景には、来春の総選挙を前に、最大野党のインド人民党が「ムンバイの事件は政府のテロ対策の失敗が原因」と非難し支持を急拡大させていることがある。シン首相と与党・国民会議派には、パキスタン関与を強調し非難の矛先をかわす狙いが垣間見える。

 一方、パキスタンでは昨年夏発足したザルダリ政権下で、経済や治安が極度に悪化。政権は失望する国民に「有事に強い政府」であることを示して、威信を回復したい意向がある。

 パキスタンのギラニ首相は25日、記者団に「インドはテロ対策の失敗をパキスタンに転嫁している。インド軍が国境を越えてパキスタン側に侵攻すれば、同じことを行う権利がある」と語った。

 ◇印パ対立

 両国は1947年の両国独立以来、北部カシミール領有権をめぐり対立。同年と65年、71年には3度の全面戦争を経験し、いずれも国力に勝るインドが勝利した。01年のイスラム過激派によるインド国会襲撃事件後には、両国は国境に合わせて100万人の兵士を集結させ「核兵器保有国同士の全面戦争一歩手前」といわれるまでに緊張が高まったが、04年から緊張緩和へ向けた対話がスタートした。

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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081227-00000058-mai-int