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2008年12月27日(土) 01時41分

中国、反日デモ機に「反対・阻止」へ転換 日本の国連常任理事国入り産経新聞

 中国が日本の国連安全保障理事会常任理事国入りについて、2005年4月に中国各地で起きた大規模な反日デモをきっかけに、それまでの「引き延ばし」戦術から「反対・阻止」活動に転じていたことが26日、政府の情報担当部局の分析で分かった。対日政策で譲歩すれば、国内の政情不安を引き起こしかねないと危惧(きぐ)したためだ。一方で、最近は「中国も対日関係などいろいろ考慮しており、頭から反対ではない」(日中外交筋)との観測も出ている。

 政府は、来年の安保理非常任理事国入りを機に「将来の常任理事国入りを頭に、しっかりとした活動を行っていく」(中曽根弘文外相)としている。そのために今後、拒否権を持つ中国をどう取り込んでいくかが外交課題となりそうだ。

 中国要人の発言や内部文書などをもとにした政府の分析によると、中国共産党は05年1月の対日工作会議で、日本の国連常任理事国入りについて、明確な反対ではなく、問題決着を遅らせる「引き延ばし」戦術をとることを確認していた。

 これには、アジアで唯一の常任理事国という地位の維持のためには日本の常任理事国入りは歓迎できないが、「国連改革に後ろ向きな中国」との国際イメージの定着や、日本側の対中感情の悪化による経済関係の冷却も好ましくないという判断があったとみられる。

 米国の姿勢もあいまいだったため、中国が率先して態度を明確にする必要は必ずしもなかった。日中外交筋は「この時点では中国に、日本の常任理事国入りを『黙認』するという選択肢もあった」と指摘する。

 ところが、この年4月に北京はじめ中国各地で日本の常任理事国入り反対を掲げた反日デモが続発。日本に強硬姿勢をとり続けなければ反政府デモに転化しかねない様相を示した。同月にジャカルタで行われた小泉純一郎首相(当時)と胡錦濤国家主席の会談でも、中国が期待した靖国神社参拝問題などでの日本側の譲歩は得られなかった。このため、中国は5月以降は常任理事国入りへの対応を明確な「反対」に転換し、外交ルートで本格的な阻止活動に乗り出したとされる。

 ただ、この対日強硬姿勢も首脳会談が復活した安倍晋三内閣以降、徐々に軟化していき、胡主席は今年5月の来日時には「日本が国際社会で、さらに大きな建設的な役割を果たすことを望む。日本の方々には、中国側の積極的な態度を感じ取ってほしい」と踏み込んだ発言を行っている。

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