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2008年12月27日(土) 12時38分

いわき市の高齢者施設火災、正月を待つ90歳と88歳犠牲に読売新聞

 福島県いわき市の高齢者介護施設「ROSE倶楽部 粒来(つぶらい)」で26日夜に起きた火事は、激しい炎と煙が2階で寝ていた高齢者8人を襲った。火の回りが早く、正月を楽しみにしていた2人が逃げ遅れた。近所の人は「助け出そうとしたのに」と悔しがった。

 2階の当直室に1人でいた女性介護職員(61)によると、突然、火災警報器が鳴ったため、すぐに2階の居室を見回った。入所者8人はみな就寝中で、1階に下りようとしたところ、煙が階段まで上がってきた。1階リネン室の入り口付近が激しく燃えており、開店中の隣のスーパーに助けを求め、消火作業を行ったが、火の勢いは衰えなかった。

 消火器を持って施設に入ったスーパーの男性店員(68)は、「助けに入った時は1階の天井まで火が上がり、煙がすごかった。駆け付けた消防士に、すぐに外に出るよう言われて脱出した」と語った。助かった人は自力で逃げ出すなどしたという。

 いわき市消防本部によると、施設にはスプリンクラーはなかったが、規模が小さいため、消防法では設置は義務付けられていない。必要な防火設備はいずれも設置されており、避難訓練も5月に行ったという報告があった。県警と消防は27日午前9時から実況見分を始め、火元とみられる1階部分を中心に原因などを調べている。

 亡くなった久野トシヱさん(88)の次男泰彦さん(61)によると、久野さんは、8月から施設に平日のみ入所。その後、腰を痛め、12月からは週末も入所していた。「クリスマスに施設に行った際には、正月に孫にお年玉を渡さなきゃと話していた。『早く良くなって』というカードを職員からもらったと喜んでいたのに」と無念そうだった。

 水谷タキさん(90)は片方の足にだけ靴を履いた状態だったという。長男泰敏さん(64)は「正月は自宅で一緒に過ごそうと思っていた。お袋もみんなと食事するのを楽しみにしていたのに」と語った。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081227-00000029-yom-soci