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2008年12月27日(土) 10時52分

<ロシア>産業界の不況深刻 治安悪化の懸念も毎日新聞

 【モスクワ大木俊治】世界的な経済危機の影響でロシアの産業界が深刻な不況に陥っている。首都モスクワの建設業界や地方都市の基幹産業では、操業縮小に伴って大量の従業員が解雇・休職に追い込まれ、社会不安の拡大を懸念する声も出始めた。下落を続ける通貨ルーブルへの不信感も募り、国民は不安な年末を迎えている。

 ロシア各紙の報道によると、特に深刻な影響を受けているのは、需要の落ち込みで生産縮小に追い込まれた鉄鋼業や自動車産業だ。ウラル地方のマグニトゴルスクでは、基幹産業の鉄鋼コンビナートがこの3カ月で約3800人の従業員を解雇し、治安の悪化が懸念されている。また南部ボルガ川沿岸地方の自動車企業「カマズ」と「アフトバズ」は1月まで大半の生産ラインの稼働を停止することを決め、給与の不払いが問題化した90年代の混乱を想起させる事態になっている。

 ロシア政府の統計では、全国の失業者は11月だけで37万6000人増え、失業率は6.5%になった。また国民1人あたりの所得は11月、前年比で6.2%低下した。

 このため政府は主要企業に対する国家支援の方針を打ち出し、25日には対象となる295企業のリストを公開するなど、不安を打ち消すのに躍起になっている。メドベージェフ大統領も24日放映された対談番組で、国民が不安視する財政破綻(はたん)やルーブルの大幅切り下げの可能性を改めて強く否定した。

 一方、極東地方では14日と21日に、輸入車の関税引き上げを決めた政府への大規模な抗議行動が起き、治安部隊が参加者を拘束する事態も発生。内務省は24日、政府関係者の会議で、抗議活動や治安悪化への懸念から警戒を強めていることを明らかにした。またモスクワではこの数カ月で旧ソ連諸国からの出稼ぎ者を中心に約6万人の建設作業員が失職したとされ、同省は外国人による犯罪や逆に外国人を狙った犯罪の増加を警戒している。

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