記事登録
2008年12月27日(土) 10時19分

オバマ次期政権、CIA長官の人選難航読売新聞

 【ワシントン=黒瀬悦成】来年1月20日に就任式を控えるオバマ次期大統領は、早々に閣僚人事を決めたのとは対照的に、次期政権の最大懸案である「テロとの戦い」の要となる中央情報局(CIA)の次期長官の人選を確定できないでいる。

 民主党の左派勢力がオバマ陣営に、ブッシュ政権下でテロ容疑者への「人権侵害」に関与した人物を起用しないよう要求しているためで、オバマ氏が掲げる「ブッシュ時代の対テロ政策からの決別」の困難さが逆に浮き彫りとなった格好だ。

 米主要メディアは今月18日、次期政権が、CIAを含む国内の16情報機関を統括する国家情報長官(DNI)に元太平洋軍司令官のデニス・ブレア退役海軍大将の起用を決めたと一斉に報道。ところが、正式発表は年明け以降にずれ込む見通しとなった。オバマ陣営は当初、国家情報長官と密接な連携が要求されるCIA長官の人事も同時発表しようとしたところ、人選の目算が大きく狂ったためだ。

 当初、次期CIA長官に最有力視されたのは、オバマ氏の諜報(ちょうほう)政策のブレーンを務めるCIA元高官、ジェームズ・ブレナン氏。ところが同氏は、国際テロ組織アル・カーイダ幹部への「水責め」などの尋問手法を採用したジョージ・テネット元CIA長官に近く、ブッシュ政権のテロ対策に一定の理解を示す発言をしていたことが判明した。

 このため、インターネット上で若者票を掘り起こしオバマ氏当選に大きく貢献した左派系ブロガーらが一斉に反発し、ブレナン氏を起用しないようオバマ陣営に求める活動を展開。結局、ブレナン氏が長官職に就く気はないと声明を発表し、事態を収拾する羽目に追い込まれた。

 しかし、CIAの職務やテロ対策に詳しい即戦力の人材であればあるほど、ブッシュ政権によるテロ容疑者の拘束や尋問、国内での通信傍受など、「人権侵害」と批判されている一連の政策に何らかの形で関与しているのが実情だ。

 米メディアや関係筋によると、現在の有力候補は、ジャック・デバイン元CIA作戦部長、ジョン・ギャノン元同分析部長など大半が元CIA幹部で、ブレナン氏の轍(てつ)を踏まないことが最大の課題となる。

 逆に、ブッシュ時代とのつながりにこだわり過ぎて実務面での適材を起用できない事態となれば、米国の安全が脅かされる本末転倒の事態を招きかねない。

 一方、ブレア次期国家情報長官は、次期CIA長官の選定に乗り出す意向とされる。CIAとDNIの間で展開されてきた、縄張り争いの新たな火種となる恐れも出てきた。

 両組織の関係をめぐっては、最近、マイケル・マコネル現国家情報長官が海外のCIA支局長のポストを他の情報機関にも割り振るよう主張し、マイケル・ヘイデンCIA長官と衝突した。このためブレア氏は、CIAを自らの影響下に置けるような人選を進める公算が大きく、DNIを頂点とする米情報機関の再編が加速化する可能性もある。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081227-00000008-yom-int