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2008年12月26日(金) 12時11分

<非正規従業員>「野垂れ死にする」…年内限りに声震わせ毎日新聞

 失業率は3.9%、来年3月までに職を失う非正規従業員は8万5000人。仕事納めの26日、雇用情勢の悪化を示す二つの数字が公表され、師走の列島を覆う不況の影が一段と濃くなった。「安心して正月を迎えられない」。派遣切りに遭った人からはそんな悲鳴が上がる。深刻な事態に対処するため、特別に30日まで業務を続ける各地のハローワークには、この日も職を求める大勢の人の姿があった。【工藤哲、町田徳丈、山本太一】

 「もともと家がないのに、仕事までなくなれば生きていけない」。東京都内の安いホテルを転々として暮らす派遣社員の女性(49)は不安そうに話す。

 20年ほど前に故郷の鹿児島から上京。警備員などのアルバイトで生活費を稼いだ。2年前に派遣社員になり、各地の工場で住み込みの仕事をした。富山県の薬品メーカーの工場に勤めていた今夏、仕事がなくなり、寮にも住めなくなった。

 都内に移り、ホテルで寝起きしているうちに、50万円ほどあった貯金は底をついた。夜間の日雇いの仕事を週数回こなして食いつなぐが、7000円前後の日当では1泊3000円の宿泊費を払うのがやっとだ。実家の両親は帰郷を勧めるが、「田舎にはもっと仕事がない」。最近、住み込みのマンション管理人の採用面接を受けた。年明けにでる結果が、唯一の希望だ。

 2年間働いていた川崎市の部品工場で、年内の雇い止めを通告された派遣社員の男性(33)は、有給休暇を使って仕事を探している。「正月明けまでは宿舎にいられる。今のうちに、アルバイトでもいいから仕事を見つけないと、野垂れ死にしてしまう」と声を震わせた。

 「隠れた失業者も入れれば、雇い止めは10万人を超えるのではないか」。全日本金属情報機器労働組合(JMIU)いすゞ自動車支部の委員長で期間従業員の松本浩利さん(46)はそう指摘し、「日本の危機に行政は休んでいる場合か」と憤った。今年最後の出勤日となった26日も、早朝から栃木工場前でビラを配った。いすゞはこの日で数百人の派遣従業員を解雇する。

 ◇「自分も使い捨てか」…仙台の男性

 朝の最低気温が氷点下2.8度と、この冬一番の冷え込みとなった仙台市。小雪が舞う中、JR仙台駅近くにあるハローワーク仙台には、午前8時半の業務開始と同時に職探しの若者らが訪れた。

 同ハローワークによると、管内の11月の新規求職者数は5334人と前年同月比5.5%増となる一方で、求人数は5410人と同38%の大幅減。今月15日に設置した非正規労働者の特別相談窓口には、25日までに62人が訪れた。

 パソコンで求人情報を見つめていた同市内の旅行代理店の契約社員の男性(29)は「3月で契約が打ち切られるかもしれないので、早めに職を探しに来た。会社や景気の都合で使い捨てにされた人が8万人もいると聞くと、自分もいつそのうちの一人になるかと思い怖い」と話した。

 800人の非正規従業員削減を打ち出した富士重工業群馬製作所がある群馬県太田市のハローワーク太田。7月にスーパーの店員を解雇された女性(42)は「失業保険をもらいながら職を探しているが、最近、求職者が増えてなかなか見つからない」と焦っている様子だった。

 ガソリンスタンドを3日前に解雇されたという日系ブラジル人の男性(18)は「父も仕事がなくなり、2人で職探し。働く場所がほしい」と、身振り手振りで嘆いた。【鈴木一也、佐藤貢】

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