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2008年12月26日(金) 08時15分

オイルのついた洗濯物 乾燥機は厳禁 エステサロンなどで発火事故増加産経新聞

 オイルのついた洗濯物が乾燥機の中で発火する事故が増えている。油分の酸化熱による自然発火が原因とみられ、「心身をリラックスさせる効果がある」と女性の間で人気の高い美容系オイルによる事故が目立つという。これから乾燥機の出番が増える季節。オイルが付着した洗濯物は、乾燥機を使用しないようにしたい。(伐栗恵子)

 ≪氷山の一角≫

 11月12日の昼下がり。奈良市内のエステサロンの乾燥機から煙が上がった。乾燥機や中に入っていたバスタオルなどを焼いただけで消し止められ、客や店員にけがはなかったが、消防車11台が出動するなど人通りの多い周囲は一時、騒然とした。

 奈良市消防局によると、マッサージオイルが付着したタオルを乾燥機で乾燥させたのが原因とみられ、今年に入って同様の火災は、ほかにも2件発生しており、コインランドリーで発火したケースもある。このため、同消防局は「オイルがついた洗濯物には乾燥機を使用しないように、市民への注意喚起を検討したい」としている。

 製品事故の原因を分析している経済産業省所管の独立行政法人「製品評価技術基盤機構(NITE)」によると、オイルの付着した衣類などから発煙、発火した事故は、平成8年度から今年11月28日現在までの間に全国で28件報告されており、今年だけで5件(大阪府4件、愛媛県1件)を数える。しかし、奈良市のケースが含まれていないことからも分かるように、実際の発生件数はもっと多いと推定される。

 多発しているのは、アロママッサージ店やエステサロンなどで起きる事故。アロマオイルが付着したタオルなどが引き金になるケースが多い。しかし、癒やしブームに乗って、一般家庭などでも同様の火災は起きており、衣類や乾燥機だけでなく、壁や天井を焼いたり、住宅50平方メートルが燃えたりした事例もある。

 ≪繊維のすき間≫

 では、なぜ発火するのか。その状況やメカニズムをNITEが実験で調べた。

 まずは綿100%の紳士用肌着を用意して、アロマオイル(50グラム)を染み込ませる。続いて、それを他の衣類と一緒に洗濯機で洗い、乾燥機で乾燥させる。槽内の温度は、街中にあるコインランドリーの乾燥機並みの120度に設定。乾燥後、放置しておくと、2時間余りで自然発火することが確認された。このときの槽内の温度は427度にも達していた。

 実験にあたったNITE北関東支所の長谷川秀夫・燃焼技術課長によると、オイルが染み込んだ衣類などは洗濯しても油分が完全には落ちず、繊維のすき間に残った油分が乾燥による熱風で酸化し、高熱を発して自然発火したとみられるという。

 ≪食用、動物系油も≫

 こうした現象が起きるのは、アロマオイルなどの美容系オイルだけなのだろうか。続いて、他の種類のオイルでも自然発火が起こりうるかを確かめた。

 食用油(サラダ油)、動物系油(ラード)、機械油、シンナー、ベンジン、ガソリンで同様の実験を行ったところ、食用油と動物系油でも発火。それぞれ最高温度は400度以上に達し、動物系油では50分強で自然発火した。

 長谷川課長によると、機械油は酸化しにくい油分であり、シンナーやベンジン、ガソリンは揮発性が高くて油分が蒸発したため、自然発火しなかったと考えられるという。しかし、引火性が強く、ごく小さな火花でも火災が発生する油分であることを考えれば、危険を生じさせる可能性は排除するに越したことはない。

 長谷川課長は「とにかくオイルの付着した洗濯物には乾燥機を使わないようにしてほしい」と呼びかけている。

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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081226-00000503-san-soci