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2008年12月26日(金) 03時12分

陸自富士学校で「秘文書」紛失、2年半も防衛相に伝えず読売新聞

 陸上自衛隊の幹部教育を担う富士学校(静岡県小山町)で2006年5月以降、自衛隊法上の「省秘」に指定されている秘文書19種類63点を紛失したにもかかわらず、陸自が今月上旬まで、紛失の事実を防衛相に伝えていなかったことがわかった。

 事態を重く見た警務隊は公文書毀棄(きき)容疑で捜査に乗り出した。防衛省の秘密保全に関する訓令では、秘文書を紛失した時は、直ちに防衛相に報告するよう定めており、防衛省と自衛隊との情報伝達のあり方についても改めて問題になりそうだ。

 防衛省や陸自幹部によると、紛失したのは、ヘリコプターや戦車を使った有事の作戦行動用の「地誌資料」。ヘリや戦車部隊などに指示を出す隊員の教材として、各地の部隊から富士学校に送付されていた。

 最初に紛失の事実が発覚したのは06年5月。資料の保存期限が切れたとして作成元の部隊から返還を求められた際、秘文書を保管している金庫を調べたところ4点が見つからなかった。

 その後の富士学校の内部調査で、2000年頃から文書管理を担当していた2等陸曹(06年末に退職)が地誌資料について秘文書の台帳への記録を怠り、段ボール箱などに入れたまま放置していたことが判明。2等陸曹が「富士学校から転出する際、焼却した私物の中に入っていたかもしれない」と話したため、陸自は「誤破棄した」と判断し、2曹を訓戒処分に、上司を注意処分にしただけで、防衛庁長官(当時)に報告しなかった。

 さらに、07年5月、ほかの資料についても同様に返還を求められた際、金庫に保管されていなかったことが発覚。再調査の結果、富士学校は同年11月末、新たに59点の紛失を確認した。

 いずれも、森勉・前陸幕長と折木良一陸幕長に報告されていたが、「誤破棄であって紛失ではない」として、防衛相や防衛省の内部部局には伝えず、警務隊が独自に捜査に乗り出した後の今月初旬、折木陸幕長が初めて浜田防衛相に経過を説明した。関係者の処分はまだ行われていない。

 防衛上の秘密文書には、「特別防衛秘密」(特防秘)と「防衛秘密」「省秘」の3種類があり、これよりも秘匿性の低いものは「注意」などに指定される。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081225-00000077-yom-soci