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2008年12月26日(金) 23時56分

府庁舎移転、鑑定額に大きな開き 大阪府と市産経新聞

 大阪市の第三セクター「大阪ワールドトレードセンタービルディング」(WTC、同市住之江区)に大阪府庁を全面移転させる構想をめぐり、府95億円、市153億円とそれぞれの鑑定額が出そろった。橋下徹知事、平松邦夫市長の両トップは合意に向けた決意を新たにしたが、府庁内や府議からは「なぜそんなに額に開きがあるのか」と疑問の声も上がる。WTCの2次破綻へのリミットが迫る中、年明けから府市による価格交渉が本格化するが、前途は多難だ。

 「(58億円の開きは)誤差の範囲だが、市がびた一文下げないと言うのなら話は進まない」と言い放った橋下知事に対して、「『えー』というのが正直なところ。これほど差があるとは…」と吐露した平松市長。26日の両者の反応は、今後の交渉の困難さを予想させた。

 府職員や府議の反応は平松市長に近い。「お互い、府庁移転を前提に建物のみの評価額を算出するという鑑定条件だったのに、なぜ1・5倍の開きが生じたのか。まずはそこを精査しないと…」。府庁舎管理課の幹部職員はこう漏らす。

 この幹部によると、移転を実現させるには来年の府議会2月定例議会で、WTCの購入費用などを盛り込んだ平成21年度予算案と、府庁移転に関する条例改正案を成立させる必要があるといい、「1月中に府市の交渉が成立しないと厳しい。額がまとまらないことには議会に提案もできない」としている。

 また、橋下知事が「市との交渉はまず、府議会の賛意を得てから」と発言したことについては、「市と交渉前に、どれぐらいの額なら納得してもらえるかを議会に確認するという意味では」と推測する。

 府議会の反応も低調だ。自民府議団の花谷充愉政調会長は「値段の開きは不可解な話。まずそこの話を聞かんことにはな…」と静観の構え。公明府議団の光澤忍幹事長は「額が安いから買う、という話ではない。(WTCがある)南港のまちづくりや、移転後の跡地利用など全体的なビジョンを示してもらわないと、話にもならない」。民主府議団の関守政調会長も「鑑定額が出ただけ。橋下知事の全体的な都市構想が出ないと、会派として協議できない」と、そっけない。

 府議会にはもともと、WTC移転への反発が長老議員を中心に根強い。府庁移転には議会の3分の2以上の賛成が必要だが、現時点では非常に厳しい状況。橋下知事には市との交渉成立と、府議会の説得という、2つの高いハードルが待ち受ける。

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