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2008年12月26日(金) 22時15分

多様化ニーズに対応、サービス向上 21年度介護報酬改定産経新聞

 来年4月からの新たな介護報酬は、多様化する介護ニーズに応えるため、リハビリテーションや終末期の看取りなどでの医療との連携や、深刻化する認知症への対応にも重点が置かれた。一方、利用者にとってはサービス内容や質が向上する分、介護報酬が総枠で3%アップしたことに伴う負担増を求められる形となる。(桑原雄尚)

 ■医療との連携強化

 高齢化社会が進行する中、社会保障費の伸びをいかに抑えるかが課題となっており、その対応策の一つが医療・介護の連携強化だ。今回の改定では、病気の治療段階は医療が受け持ち、回復期や慢性期は医療よりも費用のかからない介護で原則的に対応するという連携と役割分担を一層推し進めた。

 具体的には、医療・介護の連携が手薄な部分についてのサービスの新設や従来サービスの報酬を手厚くした。例えば、通所リハビリ(デイケア)では、「医療機関での治療後は早期に集中的なリハビリが必要なのに、デイケアが受け皿になっていない」との指摘が出ている。このため、1時間以上2時間未満の短時間・個別サービスを新設した。一部医療機関でのリハビリを介護保険で利用できるようにもした。

 訪問看護では、終末期の看取りを手厚くするほか、医療機関と情報交換した上でのケアプラン作成や、有料老人ホームなどの施設と医療機関が定期的な情報交換を行った場合も新たに上乗せした。

 利用者にとっては介護の負担は増えるが、医療保険を使うよりは割安になるとみられる。

 ■認知症対策の推進

 増加する認知症高齢者への対応強化も今回の改定の柱の一つだ。厚生労働省が7月にまとめた「認知症の医療と生活の質を高める緊急プロジェクト」の報告書に基づき、介護サービスの充実で、認知症高齢者が住み慣れた地域で生活し続けることができることを目指す。

 具体的には、現在、介護老人保健施設で実施している軽度の認知症高齢者への短期集中リハビリテーションについて、中・重度者でも利用できるようになる。このほか、通所リハビリや介護療養型医療施設でもサービス利用をできるようにする。

 グループホームでは、終末期の看取りや退去時の相談支援に対して加算される。認知症に関する専門的な研修を受けている職員が配置されているグループホームや介護施設のサービス料も同様だ。いずれも利用しやすくなる一方で、利用者にとっては利用料が高くなる。

 65歳未満の若年性認知症患者へも対応の強化策として、介護施設やショートステイなどでの受け入れを始める。患者本人や家族の希望を踏まえた上で介護サービスを受けた場合、1日あたり宿泊120円、通所60円の自己負担となる。

 認知症は早期発見・早期治療が必要なことから、認知症の疑いのある介護老健施設の入居者を医療機関に紹介する取り組みも新たに進める。1回あたりの自己負担は350円だ。

 ■外泊時費用は値下げ

 今回の改定は、介護従事者の待遇改善を図ることに主眼が置かれているため新規または値上げ項目が多く、効率化に伴い介護報酬の単価が下がり、利用者にとっては値下げになるサービスはあまり多くないことも特徴だ。

 主なものを挙げると、施設系サービスでは、入居者が外泊時に支払う費用が1日あたり80円前後の値下がり。居住系施設での管理栄養士らによる指導費も、「在宅利用者への指導に比べて移動の労力が少ない」として、1回あたりの自己負担が数十円から数百円安くなる。有料老人ホームなどの施設入居者のうち要支援1、2の軽度者は、1日あたりの生活介護費が数十円値下がりする。

 一方、利用者負担とは直接関係のない効率化策としては、訪問

護事業所のサービス提供責任者に非常勤職員の登用を可能にする。このほか、これまで看護師や介護福祉士などに限定されていた夜間対応型訪問介護事業所の電話オペレーターに、准看護師や介護支援専門員でも対応ができるようになる。

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