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2008年12月25日(木) 22時08分

<石綿被害>「目標達成に満足」 旧国鉄訴訟和解毎日新聞

 「目標が達成できて満足しています」。横浜地裁で25日成立した旧国鉄アスベスト(石綿)訴訟の和解。全面勝訴に等しいだけに、原告らは会見で笑顔を交わした。痛みに耐え亡くなった元国鉄職員の父や夫に話が及ぶと涙を見せつつも、被害者掘り起こしなど新たな課題への決意を語った。

 原告と弁護団は和解後、横浜弁護士会館で会見。元電機作業員の父加藤進さん(04年に61歳で死亡)の遺影を前に、長女で原告の大前麻衣さん(34)は「(被害者の)掘り起こしで不十分な部分がたくさんある。裁判は終わったができることをやっていきたい」と話した。

 加藤さんは粉じん対策のない旧国鉄大船工場(神奈川県鎌倉市)の職場で、車両に使われていた石綿にさらされ続けた。亡くなる1カ月前、結婚式で大前さんの晴れ姿を見て「孫の顔を見るまで絶対に死なない」と漏らした。末期の激痛に苦しみながらも旧国鉄への恨みは口にしなかった。ただ一度、働けない体になったことを「情けない」とつぶやいた。

 そんな父の「労災」を認めさせようと、大前さんは鉄道建設・運輸施設整備支援機構に業務災害補償を申請。だが、遺族には難題とも言える当時の同僚の証言を求められた。07年1月「被害に気付いていない人に危険性を伝え、業務災害認定で速やかに救済を受けられるように」と提訴に踏み切った。

 もう一人の原告だった小林忠美さんは旧国鉄とJR貨物で37年間、操車係を務めた。連結作業で車両が急停止する度、ブレーキ部品から飛散する石綿を吸わされた。遺影を手に妻綾子さん(61)は「救済への道が開かれ安心した」と涙ながらに話した。【杉埜水脈】

 ◇国交省は歓迎

 鉄道・運輸機構を監督する国土交通省鉄道局参事官室(JR担当)は、旧国鉄時代のアスベスト被害が表面化した05年以降、被害者救済を指導してきたといい、今回の和解について「喜ばしいこと」と歓迎する。また被害者全体の救済につながる内容が盛り込まれていることについて「国として高く評価する」としている。【窪田弘由記】

 ◇ホットライン開設

 和解成立を受けて原告弁護団などは26〜27日の午前10時〜午後5時、鉄道アスベスト被害ホットライン(045・580・0224、0228▽045・582・6521▽078・251・1172)を開設、弁護士らが相談に乗る。【高倉友彰】

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