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2008年12月24日(水) 00時00分

老齢加算廃止など25日判決中国新聞

 生活保護制度の見直しで老齢加算や母子加算を削減、廃止したのは生存権を保障した憲法に違反するなどとして、広島県内の男女27人が県と5市に廃止決定の取り消しなどを求めた訴訟の判決が25日、広島地裁である。同様の訴訟では6月、原告側の請求を棄却した東京地裁判決に次いで2番目で、母子加算の判断は初。社会保障費の抑制が厚生労働相の裁量範囲を逸脱して違憲違法か否かが焦点となる。

 「親しい知人が亡くなっても香典を出せず、外出も減って交際範囲が狭まった。一方的な切り捨てに納得できない」。広島市東区の加藤清司原告団長(82)は、法廷で訴えた。会社が倒産し妻に先立たれ、独り身を支えてきた老齢加算の廃止がいっそう孤独を際立たせた。

 加算は基準生活費に加え、個別の特別な需要を補てんするために創設された。過去の生活保護専門分科会で、高齢者には消化吸収の良い食品や暖房費、知人との交際費などの需要があり、一人親世帯も「就労などで外食や割高な加工食品を買う機会が増える」などと、それぞれ必要性が確認されている。

 厚生労働省は、識者で構成する「生活保護制度の在り方に関する専門委員会」の報告を経て、老齢、母子加算の段階的な削減、廃止に踏み切った。被告側は「委員会の検証の結果、加算に相当する特別な需要はなかった」と正当性を主張する。

 しかし、原告側は「廃止の結論が専門委の提言と異なっていた」と、全国に先駆けて立証した。政策変更の過程などから、原告は「廃止には、生活保護法に定める『正当な理由』がなく、裁量権の範囲を逸脱した違法がある」と主張。原告の困窮ぶりからも「健康で文化的な最低限度の生活」を保障した憲法に反するとする。

 だが、初の司法判断となった東京地裁判決は老齢加算廃止について「『最低限度の生活』の需要を満たしていないとはいえない。裁量権の逸脱はない」と指摘。合憲とした。

http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn200812240001.html