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2008年12月24日(水) 00時00分

トヨタ九州休止 沈む城下町読売新聞


閑散とした商店街(24日午前11時14分、福岡県宮若市で)=板山康成撮影
税収激減 事業見直し

 トヨタ自動車九州(福岡県宮若市)からの税収に大きく依存している地元の宮若市は、同社の業績悪化に伴い来年度の法人市民税の税収がほぼゼロになる見通しとなり、大幅な事業計画の見直しを迫られる事態になっている。回復の兆しの見えない不況に、同市の関係者は「このままでは財政運営が行き詰まってしまう」と悲鳴を上げ、市民からも不安の声が聞こえ始めた。

福岡・宮若市 工業団地まっさら

 宮若市の今年度の一般会計当初予算は約154億円。このうち同社からの法人市民税は約6億6000万円。しかし、同社は2009年3月期に赤字に転落する見通しのため、来年度の法人市民税は最低額の300万円になることが確実になった。

 このため同市は09年夏に予定していた複合生涯学習施設の着工を1年延期。約7億円をかけて建設を計画している文化複合施設も規模を縮小することを検討している。今後は火葬場や主要道路の整備も含め、事業規模を5〜15%縮小する方向で見直すという。

 有吉哲信市長は「トヨタの業績がここまで悪化するとは信じがたい思いだが、税収が落ち込んでも財政改革を推し進めることで、事業の中止や市民サービスの低下を招かないよう取り組みたい」と強調した。

 自動車関連産業の進出を期待して、福岡県が宮若市内に約23億円を投じて整備した磯光工業団地も、7月末の造成工事の完了後に分譲を始めたものの、いまだに立地企業は1社も決まっていない。7区画約19ヘクタールの敷地はまっさらなままだ。

 県企業立地課の担当者は「進出を検討していた企業も投資意欲にブレーキがかかっている。トヨタの減産が長引けば、影響も大きくなる」と懸念している。

 市民からも不安の声が上がっている。宮若市本城、中村正勝さん(65)は「生涯学習施設の着工延期は残念。自宅近くのアパートに家族連れのトヨタ従業員が住んでいるが、今後のことを思うと心配だ。国もトヨタも出来る限りの手をさしのべてほしい」と話した。

 福岡県苅田町でも来年度の予算編成にあたり、自動車産業を含む製造業などの景気の落ち込みから、「法人町民税は今年度よりも2億円少ない約5億円にとどまる」(苅田町税務課)とみている。町にはセメント、電力など様々な企業が集積しており、法人町民税は自主財源の中で大きなウエートを占めていることから、今後、厳しい予算編成を余儀なくされると懸念している。

http://www.yomiuri.co.jp/national/kishimu/kishimu081224.htm