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2008年12月24日(水) 23時57分

不安緩和狙い「守り」 重要課題推進枠…麻生予算の中身は?産経新聞

 「派遣切り」「倒産の危機」「医師不足」−。麻生太郎内閣で初めて編成された平成21年度予算は、国民不安の緩和を狙った「守り」の政策が特徴だ。「生活防衛」をキーワードに、雇用や出産、中小企業対策などを充実させる一方、次期衆院選を控え、ばらまき色の強い施策も目立つ。政策効果の高い施策に重点配分する「重要課題推進枠」が固まり、全容が表れた麻生予算の中身をみてみると−。

 「生活防衛のための大胆な実行予算。私は新年度の予算をこう呼びたい」。政府案の閣議決定に当たり、自ら予算の概要を説明する異例の会見に臨んだ麻生太郎首相は、21年度予算で生活関連の対策に手厚く配分した。

 麻生首相がまず挙げたのは雇用対策だ。自動車業界で派遣労働者や期間従業員といった非正規労働者の大幅削減が相次ぎ、雇用情勢の悪化が新たな政策課題として浮上してきた。

 来年度予算では、非正規労働者の就労支援策に前年度当初予算比約2倍の93.7億円を計上。非正規労働者を対象にしたハローワークの特別相談窓口の開設に、11.9億円を新規に予算化した。「雇い止め」後も派遣労働者らに引き続き住居を無償提供する事業者への助成費は34.8億円を計上、雇用保険の適用範囲についても「1年以上の雇用見込み」から「6カ月以上」に適用範囲を拡大させた。

 救急搬送の「たらい回し」が相次ぎ発生するなど医療のあり方が問われている。このため、搬送情報共有システムの構築や、安易な救急要請を増やさないように医師が救急相談に応じる窓口の設置費などに4.1億円を予算化した。

 産科医減少に歯止めをかけるため、出生数が少ない地域の経営困難な施設の運営支援や女性産科医の離職防止などの対策事業費として前年度当初比約6倍の45.1億円を付けた。

 生活防衛という名目で社会保障を充実させた来年度予算のもう一つの特徴は「ばらまき色」が強まったことだ。

 重要課題推進枠では「地方の底力」をキーワードに農林水産業向けの予算を充実させた。農山漁村の活性化や林業再生などを盛り込んだ「地域活性化」に675億円、ムギやダイズの作付け拡大助成と耕作放棄地解消を柱にした「食料自給力向上」に630億円を計上した。次期衆院選を控えた地方の票田対策とも受け取れる。

 麻生首相は会見で、20年度第2次補正に盛り込んだ1人当たり1万2000円の定額給付金の支給のほか、高速道路の料金引き下げ、住宅ローンや事業承継税制など一連の減税措置などもアピールした。「給付金はぜひ使ってほしい」と訴えた。

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