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2008年12月24日(水) 22時47分

世界で最初に脱不況 麻生首相“出直し”決意産経新聞

 麻生太郎首相は就任3カ月目の24日、平成21年度予算案の閣議決定を受け、首相官邸で記者会見を開いた。「生活防衛のための大胆な実行予算」。首相は初の予算案をこう名付け、パネルと指し棒を使って予算案の概要を説明した。異例の会見スタイルには、「経済の麻生」を印象づけたいとの思いがにじみ出る。世界的な経済危機が「底なし」の様相を呈する中、日本の牽引(けんいん)役として指導力を発揮できるか。来年1月5日召集の通常国会でその真価を問われることになる。(石橋文登)

 「世界は100年に1度の不況に入りつつあり、日本もこの津波から逃れることはできない。異常な経済には異例な対応が必要だ。大胆な対策をうつことにより、世界で最初にこの不況からの脱出を目指す」

 記者会見の冒頭で首相は語気を強めた。

 10月に成立した第1次補正予算、第2次補正予算、来年度予算案の「3段式ロケット」の総事業規模は75兆円にのぼる。首相はこれらの経済対策を日本の産業構造を内需型に切り替える「誘い水」にし、欧米の経済危機の余波を最小限にとどめたい考えだ。

 一方で、首相は3年後の消費税率引き上げを重ねて表明し、財政規律を重視する姿勢を示した。野放図な財政拡大は国債暴落やインフレを招きかねないためだが、景気回復に全治3年というリミットをつけることで、今後も追加対策を打ち出す「大義名分」にしたいとの思惑も透けてみえる。

 これらの経済戦略は、首相が就任前から中川昭一財務相らとひそかに練ってきたプランだった。「小派閥の領袖にすぎないおれに出番が回ってくるのは、本格的な経済危機が訪れたときだけだ」。首相は当時こう漏らしており、景気が底を打つ時機を見据えて政権構想を温めてきた。

 ところが世界経済は予想を超えるスピードで悪化。福田康夫前首相が9月に突然辞任を表明し、予想外に出番が早まってしまった。

 この目算の狂いが、政権発足後の一連の失態を招いたとも言える。早期の解散・総選挙は断念を余儀なくされ、“目玉政策”の定額給付金は所得制限をめぐり大混乱となった。漢字の読み違いや失言も続き、支持率下落に拍車をかけた。

 さすがの首相も一時は気落ちしたようだが、最近は再び自信を取り戻しつつある。きっかけは13日に福岡で開かれた日中韓首脳会議だった。自らが提唱した経済・金融政策に中韓両首脳が同調したことに「やはりこの経済路線しかない」と意を強くしたようだ。

 だが、来年の通常国会は大荒れとなるのは確実だ。民主党は徹底抗戦により早期解散に追い込む構えを見せており、与党内の不協和音もなお消えない。

 首相は記者会見でそんな重い空気を吹き飛ばしたかったのではないか。

 「一部には『選挙だ』『連立だ』『政界再編だ』という議論があるのは承知しているが、そんなことを言っている場合ではないし、あり得ない。私は国民生活防衛のためなら、どんな批判も恐れず何でもやり抜く覚悟だ」

 会見は再出発を期すための「所信表明」だった。

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