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2008年12月24日(水) 22時26分

派遣820人「置き去りか」、いすゞ削減撤回で明暗読売新聞

 期間従業員約550人の契約打ち切りを撤回することを決めた「いすゞ自動車」と労働組合との団体交渉が24日、都内で開かれた。

 同社側から説明を受けた派遣労働者の組合員らは「派遣は置き去りか」と激しく反発。同じ非正規労働者でありながら処遇に明暗が分かれる形となった。期間従業員の組合員も「いずれ解雇されることに変わりはない」と不安を口にした。

 派遣労働者として同社藤沢工場で3年間勤務してきた山本秀男さん(34)は交渉終了後、期間従業員と処遇が割れたことに、「同じような仕事をする労働者なのに扱いが違うのはおかしい」と憤り、「今後の交渉に望みをつなぎたいが、長引くかもしれず、仕事探しに支障が出る」と不安を隠さなかった。

 今年6月から同工場で働く派遣労働者の男性(40)も「派遣にも何らかの対策が示されると期待していたが、きょうの話し合いでは光が見えなかった」と落胆の表情。

 一方、同社栃木工場(栃木県大平町)で働く男性期間従業員(47)は「契約期間のある来年3月末まで解雇されずに済むのは一歩前進」と歓迎しつつも、「4月以降は生活の見通しが立たない。派遣からスタートして約4年間、正社員を目指して頑張ってきたのに」と肩を落とした。

 臨時的な雇用契約を結んで働く労働者は、正社員に対して非正規労働者と呼ばれるが、このうち、期間従業員やパート、アルバイトなどは勤め先の企業による「直接雇用」。一方、派遣会社に登録して派遣先企業で働く労働者は「間接雇用」の関係にある。

 厚生労働省によると、2006年6月1日時点で製造業に派遣された労働者は約24万人。総務省の労働力調査では期間従業員を含む製造業の契約社員は06年平均で40万人となっている。期間従業員に比べ、派遣労働者の賃金は、派遣会社が間に入ってマージン分が差し引かれるため一般的に低い。

 派遣労働者にとって、就職先を探してくれるというメリットはあるが、派遣先企業と派遣会社という会社間の契約に左右されるという不安定さを持っている。

 舛添厚生労働相は19日、日本経団連に対して、「有期契約労働者の場合は、やむを得ない事由がある場合でなければ契約期間中に解除できない」と要請、直接、間接の違いにかかわらず契約打ち切りをしないよう求めている。しかし、今回は直接雇用者だけが打ち切り撤回の対象で、約820人の派遣労働者はカヤの外に置かれた形だ。

 交渉に臨んだ「全日本造船機械労働組合いすゞ自動車分会」の風呂橋修執行委員長は「一定の評価はできるが、派遣労働者については、何ら改善が見られない。引き続き雇用継続を目指して交渉していく」と語った。

 いすゞ広報部は「交渉中なのでコメントできない」と話している。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081224-00000061-yom-soci