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2008年12月24日(水) 21時31分

<09年度予算>重要課題先送り 与党、省庁要望の寄せ集め毎日新聞

 政府は24日、09年度当初予算案を閣議決定したが、焦点だった年金・医療・介護など社会保障の安定財源確保や道路予算改革など重要課題はすべて先送りされる「哲学なき予算」(大和総研アナリスト)となった。一般会計総額は88・5兆円と過去最大に膨らんだが、「経済急変に備える」とするだけで使途を明確にしない“つかみ金”的な「経済緊急対応予備費」(1兆円)や、地方交付税の1兆円増額が盛り込まれるなど納税者に対し透明性を欠く面も目立った。

 「100年に一度の経済危機に対する生活防衛で、短期は大胆(な財政出動)、中期は税制の抜本改革による(財政再建の)責任を目指している」。麻生太郎首相は09年度予算案閣議決定後の会見でこう強調した。「世界で最初に不況から脱出する」と見えを切ったが、景気対策として盛り込まれた政策を見ると、規模は大きくても、与党や各省庁の要望を寄せ集めた印象が強く、失業不安も広がる日本経済を浮揚させる力強さは感じられない。

 24日の株式市場の反応は乏しく、日本の景気の一段の悪化懸念から株価は大きく下げた。

 一方で、重要課題の先送り姿勢は明白だった。安定財源を確保した上で実施するはずの基礎年金の国庫負担割合の2分の1への引き上げ(年間2・3兆円)は特別会計の積立金(埋蔵金)の流用で一時しのぎ。政府は10年度もこの方法を継続するが、一度使ったらなくなる埋蔵金では年金不安は解消しない。

 また、道路特定財源の一般財源化も肝心の「必要な道路」の議論は置き去りにされ、単なる道路族と地方の予算の配分ゲームに終わり、一般財源化に伴い環境や子育てなどに予算を回す「生活者財源として活用する」との約束はほごにされた。

 高齢化の加速で、09年度予算案で過去最大の25兆円に膨らんだ社会保障費については、麻生首相は消費税増税を含めた税制抜本改革の11年度実施を盛り込んだ「中期プログラム」の実行で対応する考えを繰り返した。しかし、その実施に向けた作業の中核となるはずの中川昭一財務・金融担当相は24日の会見で「消費税の引き上げ率がどのくらい必要か考えたこともない」と述べるなど、政府内でも腰が定まっていない。【清水憲司】

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