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2008年12月23日(火) 10時12分

三重・鳥羽の旅 老舗観光地の海と人と産経新聞

 三重県鳥羽市は老舗観光地である。と同時に、今も研鑽(けんさん)を怠らず、さまざまな仕掛け、リニューアルを連発し進化し続けている。「商売は飽きない(商い)が大事」と言われるが、全国、いや世界から人を集めるのも同じ。コンテスト「伊勢志摩キャンペーン2008創作料理展in鳥羽」が初めて開催され、入賞した斬新な料理が来年早々、宿泊施設で楽しめるようになった。「鳥羽水族館」、「ミキモト真珠島」を巡りつつ、海と人との豊かな関係を確かめた。(藤原義則)

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 辺りは冬枯れ、と言いたいが、常緑樹が繁茂して迫る。山中を切り裂くように、近鉄特急が鳥羽線を走り抜けた。やがて目の前に鳥羽の海が広がった。日差しは明るい。

 鳥羽駅で降りて、鳥羽水族館へ向かった。1955(昭和30)年5月15日、開館。53年経つが、リニューアル、ボリュームアップを続け、今では約850種2万点が展示されている。「各水族館で特徴がありますが、鳥羽は入館者が日本最多。来年5月以降、通算5500万人に」と学芸員の杉本幹さん。でも記念式典は「5555万5555人達成時がよろしいな」と夢を膨らませた。

 女優、竹下景子さんがセイウチと抱き合い、「お髭(ひげ)が茹(ゆ)でる前のスパゲティーみたい」とポスターで叫んでいるが、セイウチはとぼけた顔して、のったりと泳ぐ。暖かい海に暮らすジュゴンは雄と雌が別々の水槽に入っており、雄は水草をむさぼり食っていた。

 一回り大きいマナティがいい。アフリカの淡水に暮らし、体重700キロ。サラブレッドより200キロ重い。グデーッと水底に横たわり、時々、「仕事かい」とばかり浮き上がるが、すぐに沈む。おおらかでノンビリして温かそうで、本当にうらやましい。

   ■ ■ ■ 

 次に、「ミキモト真珠島」へ。リニューアルを重ねており、モダンで清潔な建築群が目に入る。明治26年、真珠王、御木本(みきもと)幸吉翁が世界で初めて真珠養殖に成功した島として知られている。

 観光客らの人気を集めているのが、1日10回前後繰り広げられる「海女(あま)の実演」。3人が海女船で養殖筏(いかだ)まで近づいてきた。純白の磯着に身を包み、船上から手を振った。見るからに寒そう。それなのに、ザンブと冬の海に飛び込んだ。思わず身が縮んだ。ゲストルームでガラス越しに、香港からの団体観光客が大拍手。中国語など9カ国語のガイダンスが流れるそうだ。

 「冬と夏で実演手当てが異なるでしょ?」と質問してみた。経営企画室の担当者は嫌がらず、「そうなんです。でも冬は拍手が多いけど。夏なんか『オー、気持ち良さそうやな』と羨(うらや)ましがられるばかり」と笑顔をみせた。冬の海水温は7度まで下がる。辛いだろうが、上は55歳定年で、下は18歳。海女初体験の女性も増え、地元の雇用促進に貢献しているそうだ。

 海外観光客が増加中で、特にアジア勢が健闘。「皆さん、ここで真珠を買うのが鳥羽観光最大の目的です」。真珠が宝石になるまでのすべてが博物館で見学できる。今でも世界の真珠の重量だけは「匁(もんめ)」で計られるという。

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 創作料理展は今年11月、鳥羽商工会議所で行われた。プロの技はさすが豪華絢爛(けんらん)だが、弁当部門は一般・高校生が出展した。伊勢市のパート、茂谷順子さん(49)は「美(うま)し国のおかげ弁当」で県知事賞。特産アオサとジャコの天ぷら、カレー風味のアラメ、メーンはカツオの「手こね寿司」。

 会長賞には三重県立白子高校生活創造科3年、鈴鹿市の山下友里さん(18)が「カップin伊勢志摩」で輝いた。パールポークとポテトのコロッケを伊勢イモ、ヒジキを練り込んだパンで包んだ。地元調理関係に就職も決まり、山下さんは「ホントにうれしい」。笑顔を見守る井上ゆかり教諭は「フード授業の一環でした」と涙ぐんでいた。

 「戸田家」でプロの料理に満腹となり、露天風呂を楽しんだ。コンテストで入賞した斬新な料理が宿泊施設で味わえるようになれば、鳥羽の魅力はさらにアップしそうだ。


 【伊勢志摩キャンペーン 美(うま)し国、まいろう。伊勢・鳥羽・志摩】 来年3月31日まで、伊勢市、鳥羽市、志摩市でキャンペーン中。さまざまなイベントが展開されるが、民間企業との連携が特徴。キリンビールは「昔ッから、決まッとる」、中部ローソンは「美し国、まいローソン」がキャッチフレーズ。(電)0596・44・0800。

 【ミキモト真珠島】 近鉄鳥羽線、JR参宮線の鳥羽駅から徒歩約3分。真珠のすべてが分かる「真珠博物館」、「御木本幸吉記念館」など見どころ満載。「パールプラザ」ではパール・ジュエリーや島だけのオリジナル・ジュエリーなどがあり、海外観光客らに人気。大人1500円、小・中学生750円。団体割引有り。(電)0599・25・2028。

 【鳥羽水族館】 「ミキモト真珠島」から南へ徒歩約4分。国内有数の巨大水族館として知られる。館内に12ゾーンが設けられており、海獣部門は特に充実している。大人2400円、小・中学生1200円、幼児600円。団体割引有り。(電)0599・25・2555。

 【アクセス・宿】 近鉄特急で上本町〜鳥羽駅間約2時間。「戸田家」は落ち着いた和室からの眺望、海の幸が魅力。(電)0599・25・2500。

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