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2008年12月23日(火) 00時28分

【ソック・サバーイ〜元気ですカンボジア】(上) 『ワンダラー!』弾ける笑顔産経新聞

 黒髪の子供たちに混じって茶髪の子供が遊んでいた。「おしゃれで染めているのかな」と思って大人に聞いたら、栄養不足で色が抜けたという。そんなことになるとは知らなかった。

 アンコール遺跡北西部に広がる「アンコール・クラウ村」。他のカンボジアの農村と同様に決して裕福な土地柄ではない。しかし遺跡内の草刈りや土産物販売で生計を立てる家庭が多いこの村の子供たちは、実にたくましかった。

 村はジャングルに囲まれていて、かまれると大人でも腫れるという毒アリがいる。それでも、子供たちはほとんど裸足。アリが足下をはっていても一向に平気で遊んでいた。ガキ大将と思われる男の子が木の枝を手に10人ほどを従えて歩く姿は、日本の昭和の風景とも重なった。

 「ワンダラー(1ドル)、ワンダラー」。世界的な仏教寺院・アンコールワットを歩くと、たくさんの土産売りの子供が駆け寄ってくる。肩にかけたかごにはキーホルダーや絵はがきなどがぎっしり。

 あまりに熱心なセールスなので、絵はがきなどを買い込んだ。しばらく歩くと、今度は「オトウサン、オトウサン」と女の子。かごに入った土産を両手に掲げながら「センエン(千円)」と叫ぶ。年齢を尋ねると12歳という。根負けすると、「キヲツケテ」と笑顔で見送ってくれた。

 取材の合間に訪れたトンレサップ湖では、遊覧船に乗っていると、今にも沈みそうな小舟で親子が近づいてきた。男の子が何か話しかけてきたかと思うと、突然麻袋から体長2メートルもありそうなヘビを取りだして首に巻き付けた。分かっていてもついつい撮影。お約束の「ワンダラー!」。

 子供たちの笑顔はみな、はじけていた。日本なら缶ジュース1本も買えないお金のために、観光客に1日中声をかけ続ける。貧しい中で、懸命に生きる子供たちの姿があった。

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 12月初旬、奈良文化財研究所によるカンボジア・アンコール遺跡調査に同行した。街角で出会ったのは、豊かではないけれど、元気にたくましく生きる子供たちと、仲睦まじい家族の姿だった。 (小畑三秋)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081223-00000503-san-int