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2008年12月23日(火) 07時40分

「春まで待てない定額給付金」…色あせ自民内に撤回論も読売新聞

 2008年度第2次補正予算案に盛り込まれた2兆円の「定額給付金」事業は、麻生首相が10月末に打ち出した目玉政策だが、所得制限の是非などをめぐる閣内の迷走は、首相の指導力不足を露呈した。自民党内には、事業の効果を疑問視する声も根強く、首相が目指す年度内支給には、なお課題が山積している。

 その背景を探った。

 ◆造反の不安◆

 「衆院で(自民党から)17人が私たちに賛成してくれると、3分の2が使えない。そこで、麻生(政権)が行き詰まることもある」

 民主党の輿石東参院議員会長は21日、甲府市内で講演し、次期通常国会での第2次補正予算案と関連法案の審議について、自民党側の造反に期待を示した。

 首相は、来月5日召集の通常国会で、2次補正と関連法案を早期に成立させたい考えだ。だが、予算関連法案は、野党が多数を握る参院で否決された場合、衆院の3分の2以上の多数での再可決が必要になる。自民党から17人が造反すれば、法案は再可決できず、政局は一挙に緊迫する−−というのが、民主党が望むシナリオだ。

 今月に入り、自民党では、山崎拓・前副総裁が定額給付金の「撤回論」を唱えるなど給付金への不満が公然と噴き出している。塩崎恭久・元官房長官は、9日、「速やかな政策実現を求める有志議員の会」の会合で、「地元に帰って給付金の説明に窮することが続いている」と訴えた。

 15日夜、自民党各派閥の事務総長らが集まった会合では、「給付金が発表された10月末には、原油高対策の意味合いもあった。今は原油価格が下がり、国民への説明が難しくなった」との意見が相次いだ。

 背景には、読売新聞の世論調査で、72%が給付金の支給について評価しないと答えるなど、「ばらまき政策」との批判が強いことがある。

 もっとも、「首相が公約をいまさら翻すことは難しい」との認識は党内に浸透しているだけに、自民党の中堅議員は、「衆院選を控えて、世論の理解を得るにはどうしたらいいか、焦るばかりだ」と語る。

 定額給付金を実際に支給する地方自治体側の不満も、くすぶったままだ。

 18日、兵庫県西宮市議会と大阪府高槻市議会が定額給付金の撤回を求める意見書を採択した。「国は、市町村に支給方法を丸投げするなど無責任だ」などの理由からだ。

 自民党の三役経験者は、こんな不安を漏らす。

 「2次補正は年内に成立させるべきだった。早く実施していれば、給付金も悪い政策ではなかった。しかし、支給が来春となれば、色あせて効果はない」

 ◆自公のきしみ◆

 首相は10月30日の記者会見で、「定額給付金を全世帯に実施する」と明言した。しかし、翌日の経済財政諮問会議では、民間議員から「中・低所得者に的を絞った対策が適当ではないか」などの意見が相次いだ。与謝野経済財政相は、所得制限を設ける方向で首相発言を軌道修正した。その後、鳩山総務相らから異論が出て、首相の発言は二転三転した。

 こうした混乱には、経済政策の司令塔を務める与謝野氏と首相の呼吸が合わなかったことが一因との見方が出ている。

 定額給付金は、公明党の強い要求を受け、今年8月に決まった福田政権の総合経済対策に「定額減税」として盛り込まれた。その際、財政規律を守る立場から、抵抗したのが与謝野氏だった。自民党内には、公明党主導で政策が決定されることに不満も多い。自民党関係者は、「与謝野氏は、麻生首相のためにと動いたが、首相は閣内の意思統一を図れなかった」と指摘する。

 今月20日の閣僚懇談会。与謝野氏は、公明党の斉藤環境相らを前に、「定額給付金を実施するには、前提があった。単年度だけ実施、適切な財源を見つける、税制抜本改革に合わせて行うという3点を確認したはずだ」と語気を強めた。

 税制抜本改革の道筋をつけずに給付金だけを実施することは認められないと、税制抜本改革の「中期プログラム」に、消費税率の引き上げ時期を明記することを認めるよう公明党側に暗に迫ったのだ。そこには、首相との二人三脚で、「自民党らしさ」を押し通そうという思いがうかがえた。

 与党のきしみは増幅する気配だ。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081223-00000002-yom-pol