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2008年12月23日(火) 00時00分

炊き出しの列 失職の若者読売新聞


寒さの中、炊き出しを受け取る人たち(名古屋市中区で)=川口武博撮影
NPO「ギリギリ」 一時宿泊所も定員寸前 名古屋

 名古屋市でホームレスを対象にした炊き出しに並ぶ人が、急増している。不況で職を失った派遣・期間従業員の若者が古参のホームレスに交じって並ぶ姿が目立っており、炊き出しを行っているNPO法人では「例年より食事の量が増え、費用はギリギリの状態」と悲鳴を上げている。同市が運営するホームレスの一時宿泊施設「名城公園宿泊所」も3か月前の3倍近い入所者があり、定員の200人まで空きはあとわずか。年末、新たな入所者を受け入れられなくなる恐れが出てきた。

 今月18日午後8時過ぎ、同市・栄の名古屋高速高架下にあるゲートボール場で、NPO法人「ささしま共生会」によるボランティアの炊き出しが始まった。

 この日のメニューはハヤシライス。温かな湯気が立ち上り、配膳(はいぜん)前には、すでに長い行列ができた。8年前からホームレスをしている男性(59)は「今まで見なかった顔も、ここ数か月でずいぶん増えた。不景気の影響なんだろうねえ」としみじみ。付け合わせのマッシュポテトと漬物も、きれいに平らげた。約400人分のハヤシライスは、1時間ほどでなくなった。

 同会では、傘下の6団体が週2回、交代で炊き出しを行っている。同会理事長の竹谷基(もとい)さん(54)は「9月までは1日平均250人だった。増加は明らかに不況の影響」と分析する。

 竹谷さんによると、ここ3か月で増えたのは身なりのきれいな「新参の若者」だ。先月から野宿を始めたと話す25歳の元派遣社員もいた。竹谷さんは「彼は『次の仕事が見つからない』『このまま落ちていくかと思うと怖い』と話していた。野宿を始めると、立ち上がるのが難しくなる。それが心配」と気遣っていた。

 一方、名古屋市中区にあるホームレスの一時宿泊施設・名城公園宿泊所への入所者は秋以降、急増している。

 「ここ2週間、水しか口にしていない。このままでは正月を迎えることもできない」。今月18日、入所相談に訪れた男性(35)は苦しげに話し始めた。

 男性は同市内の派遣会社に登録し、今年10月から愛知県田原市のトヨタ自動車田原工場に勤務していた。契約期間は2010年9月までだったが、勤め始めて2か月後の先月下旬、約50人の同僚とともに解雇された。貯金の6万円はすぐになくなり、公園で野宿を始めた。「寝袋に入っているが、冬の夜の寒さは身にしみる。このまま、苦しまずに凍死すればいいのにと思う時もあった」と声を震わせた。

 名古屋市によると、8月末に59人だった入所者が、11月末に135人、今月中旬には165人に増えた。50歳代以上の中高年が中心だが、最近は男性と同様、仕事と住居を失った20、30歳代の派遣・期間従業員が目立つといい、このペースでは年末に施設の定員200人を超える可能性が出てきた。

 同市健康福祉局の大森益男主幹は「予想外の事態。定員を超えるようなことがあれば、市の別の更生施設を紹介するなど、対策を考えたい」と危機感を強めている。

〈名城公園宿泊所〉 名古屋市が2004年5月、名古屋城の正門脇にオープンしたホームレスの一時宿泊施設。入所期間は最長で6か月。2畳ほどの個室と夕食が無料で提供され、自立のための職業訓練が受けられる。女性専用の部屋もある。

http://www.yomiuri.co.jp/national/kishimu/kishimu081223.htm