記事登録
2008年12月23日(火) 23時04分

奄美の公設法律事務所、前所長の業務めぐり苦情120件読売新聞

 「奄美ひまわり基金法律事務所」(鹿児島県奄美市)で今年4月まで所長を務めた男性弁護士(32)に対し、市民から「債務整理を依頼したのに放置された」などの苦情が、約120件寄せられていることが分かった。22日には2人の元依頼人が、この弁護士に慰謝料などの損害賠償を求める訴訟を鹿児島地裁名瀬支部に起こした。

 同事務所は、日本弁護士連合会が弁護士過疎地域に設置を進めている公設事務所。2005年3月に設置され、弁護士経験が1年5か月だった男性弁護士が初代所長として赴任した。しかし、男性弁護士への苦情が殺到し、多重債務の相談窓口となっている市の市民課も、この弁護士を紹介しないようにしたという。

 220万円の賠償を求めて提訴した市内の女性(40歳代)は05年5月、男性弁護士との間で債務整理の委任契約を結んだが、「自己破産するしかない」と言われただけで、整理方法などの具体的な指示や説明がなかったという。

 その後、弁護士は自己破産手続きなどに着手せず、女性に連絡しないまま今年1月に辞任。女性は4月、債権者から訴訟を起こされ、給料を差し押さえられてしまった。

 今年5月、後任の所長として赴任した大窪和久弁護士(33)が女性の代理人を務めている。大窪弁護士は「地域の問題を解決するための事務所なのに、かえって問題を大きくする事態になり遺憾だ」と嘆いている。

 男性弁護士は所長を退任後、静岡県内で事務所を開いている。日弁連は担当者を奄美市に派遣し、事実関係の調査を進めている。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081223-00000042-yom-soci