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2008年12月23日(火) 23時03分

<バングラデシュ>「非合法キャンプ」で助け合う難民たち毎日新聞

 ミャンマーからバングラデシュ南東部に逃げ出してきたロヒンギャ族の人々は、バングラデシュ政府の財政的な問題から、大部分が正式に難民として認められず、非合法のまま滞在している。今年11月中旬、約8000人が暮らす「非合法キャンプ」を訪ねた。そこで見た光景は、追い詰められた非合法キャンプの人たちに、救いの手を差し伸べる正式キャンプに住む難民たちの姿だった。【福田隆】

 バングラデシュ第2の都市・チッタゴンから南へ約150キロのクトゥパロン。幹線道路沿いの丘陵地帯に、草ぶき屋根の劣悪な住宅群が現れた。難民キャンプに入れなかったロヒンギャ族が集住する非合法キャンプだ。すぐ隣には、正式に登録されたロヒンギャ難民約1万人が住む正式キャンプがある。

 「見てくれよ、こんなに違いがあるんだ」。男性たちが、私たちを非合法区域内に呼び込んだ。彼らは、正式キャンプ内で教師や医師を務める難民たちだった。男性教師(21)は「本当は禁じられているけど、あまりの格差に黙っておれず、こっそり来て子どもたちの面倒を見ているのだ」と話した。

 両キャンプの様子は残酷なほど対照的だ。正式キャンプでは、建物の屋根は新しいトタンが用いられ、立派なモスクや学校があり、井戸や太陽光発電装置もあった。一方、非合法キャンプでは、竹や草を使ってかろうじて住宅を作り、壁は破れてボロボロだ。水はため池を使い、医療や教育のサービスはもちろんない。当局の目を逃れながら、拾った薪(まき)を街で売るなどして生計を立てているが、1日に1食しか食べられないことも珍しくないという。

 私たちが訪れた日の朝、10代の少女が高熱で苦しんだあげくに死亡した。墓地では、少年たちが墓穴を掘る。ある男性は「1日1人は死んでいる。ほとんどが子どもだ」と嘆いた。1人暮らしの男性、アブルカシムさん(60)が建物の脇で横になったまま、動けなくなっていた。心臓病を患い、やせ細り、いつ命を落としてもおかしくない。「とにかく楽になりたい」。そう声を振り絞った。

 正式キャンプの男性医師(62)は「キャンプ内の薬は分けているが、まったく足りない。バングラデシュ政府は資金不足で新たに登録難民を受け入れられないというが、なんとかならないのか」と険しい表情で訴えた。

 しかし、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の報告書によると、バングラデシュ政府は国際機関などと協力して問題解決を図ろうとはしているが、そのめどは立っていないという。

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