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2008年12月23日(火) 18時24分

【08追悼】華国鋒、P・ニューマン…産経新聞

 チベット騒乱や北京五輪聖火リレー、米国発の世界的な金融危機などで揺れた今年も、世界の多くの著名人が世を去った。歴史に名を刻んだその足跡をたどった。

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 今月18日、北京市の人民大会堂で、改革・開放30周年を祝う式典が盛大に催された。大国にのし上がった中国も、32年前、華国鋒元共産党主席(8月20日、87歳で死去=以下同じ)が下した決断がなければ、違った道を歩んでいたかもしれない。

 文化大革命末期の1976年、毛沢東から後継者に指名され党主席に就いた華氏は、江青・毛沢東夫人ら「四人組」の逮捕に動き文革を終結させた。2年後、トウ小平氏に実権を奪われたが、四人組の打倒なしに、トウ氏の復活と改革・開放への歴史的な転換はなかった。毛沢東の“隠し子”との説が流れ、凡庸な人物とみられてきた華氏に対する評価は、改革・開放の矛盾が拡大するにつれ見直されてきている。

 天安門事件から20年となる2009年もまた、中国にとり節目の年となる。1989年春の事件当時、北京市トップの中国共産党北京市委員会書記を務めた李錫銘氏(11月10日、82歳)は、民主化運動を展開する学生を武力で取り締まるようトウ氏らに訴え、血の弾圧を主導した。


(トウ=登におおざと)


 40年代から中国の変貌(へんぼう)を見続けてきたジョン・ロドリック元AP通信北京支局長(2月11日、93歳)は2月、「中国が、あの貧困と流血の中からこれほど短期間に繁栄を実現したのは奇跡としかいいようがない」と書いた。米下院で慰安婦問題をめぐる対日非難決議採択を主導した民主党のトム・ラントス下院外交委員長(2月11日、80歳)は、中国の人権抑圧にも厳しい立場を貫いた。

 北京五輪の聖火も運ばれた世界最高峰エベレスト(中国名チョモランマ)の山頂に、人類が初めて立ったのは53年5月。ニュージーランド出身の登山家、エドモンド・ヒラリー卿(1月11日、88歳)は下山後、「あいつ(エベレスト)を打ち負かしたよ」と語った。

 ロシアでは、旧ソ連の全体主義体制を批判した著作で知られるノーベル賞作家、アレクサンドル・ソルジェニーツィン氏(8月3日、89歳)が逝った。スターリン体制の非人間性を告発しソ連解体を提唱した彼の死去で、旧ソ連における反体制文化人の系譜は終焉(しゅうえん)を迎えた。

 プーチン前政権と親密な関係を築き、ロシア正教を事実上、「国家宗教」の座に押し上げたのが総主教、アレクシー2世(12月5日、79歳)。だが、「教会を支配した政権は暴君と化す」との批判が絶えなかった。

 インドネシアの経済発展を実現したスハルト元大統領(1月27日、86歳)は、一族による経済の私物化と不正蓄財が問題となった。

 「2001年宇宙の旅」などで知られる英国出身のSF作家、アーサー・C・クラーク氏(3月19日、90歳)は40年代に、2000年までに人類が月に到達すると“予言”した。20世紀を代表したフランスのデザイナー、イブ・サンローラン氏(6月1日、71歳)は、パンタロンスーツや女性用のタキシードなど、解放された女性モードで名を馳せた。

 映画「ベン・ハー」「猿の惑星」などで知られる米俳優、チャールトン・ヘストン氏(4月5日、84歳)は、1998年に全米ライフル協会(NRA)会長に就任。当時のクリントン政権下で論議となった銃規制に、真っ向から反対する姿勢を貫いた。

 「ハスラー2」(1986年)でアカデミー主演男優賞を受賞するなど、数々の名演技でファンを魅了した米俳優、ポール・ニューマン氏(9月26日、83歳)は反戦運動にも携わり、2億ドル(約178億円)以上をチャリティーに寄付するなど、本業以外の活動でも知られた。

 世界経済の混乱が続く年末には、過去の“大事件”の関係者の訃報(ふほう)が続いた。元米連邦捜査局(FBI)副長官、マーク・フェルト氏(12月18日、95歳)は、ニクソン元米大統領を退陣に追い込んだウォーターゲート事件の情報源「ディープスロート」。76年に発覚したロッキード事件では、元ロッキード社副会長のアーチボルト・カール・コーチャン氏(12月14日、94歳)の航空機売り込み工作に関する証言が、故田中角栄元首相の起訴につながった。(川越一)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081223-00000563-san-int