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2008年12月23日(火) 14時16分

あこがれ江ノ電“運転士”に、心臓病で他界の少年に辞令読売新聞

 神奈川県藤沢市の江ノ島電鉄江ノ島駅で22日、線路や駅を再現したジオラマの出発式が行われ、10年前に心臓病で他界した新田朋宏さん(当時16歳)を模型電車の運転士に命じる辞令が交付された。

 朋宏さんは亡くなる直前、あこがれていた「江ノ電」の運転士を体験する夢を実現。父親らは、「天国で夢の続きを」と願っている。

 朋宏さんは1998年11月、拡張型心筋症で亡くなった。4歳で茅ヶ崎市内の虚弱児施設に入所。9歳の時に同じ病で母親を亡くし、大好きな鉄道が心のよりどころになった。特に、父親の和久さん(56)(東京都大田区)と乗った江ノ電の大ファンで、「運転士になりたい」という夢を抱き続けていた。

 その夢は、亡くなる4日前にかなった。ボランティア団体と江ノ電が協力。朋宏さんは制服姿で電車の運転席に入るなどして楽しんだ。

 ジオラマは、東京都品川区の学習塾経営石井彰英さん(53)の作品。江ノ島、稲村ヶ崎など5駅の周辺を通行人ら人物600体、車100台とともに再現。約2年かけて今春、完成させた。

 江ノ島駅に寄贈されたのは、石井さんがジオラマの映像を収めたDVDを知人らに配り、うち1枚が和久さんの手に渡ったのがきっかけ。和久さんは朋宏さんの遺影を携えて石井さんを訪ね、交流が始まった。石井さんから寄贈先を相談された和久さんは、江ノ電に話を持ちかけた。

 22日の出発式では、江ノ電の深谷研二社長が和久さんに辞令を手渡し、石井さんが出発ボタンを押した。和久さんは「朋宏が『すごい』と喜んでいると思う」と話していた。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081223-00000017-yom-soci