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2008年12月23日(火) 12時13分

「一杯のおかゆ」失業者に慈善配給、行政の無策批判も…中国読売新聞

 中小民営企業が30万社以上集中する中国浙江省温州市で、高齢者ボランティアが2年前から始めたおかゆの無料配給が、金融危機で失業した出稼ぎ農民らで活況を呈し、メディアなどで大きな話題となっている。

 工場閉鎖による社会不安が広がる中、行政の無策批判につながりかねない「民間の慈善」に、地元政府は複雑な表情だ。

 「ここ数日、朝からテレビや新聞が何社も来るんだ。おかげで米とお金の差し入れも増えたよ」

 リーダーの朱永麟さん(82)は驚きと喜びを隠せない。2006年8月、高齢者仲間で約5000元(約7万円)を出し合い、同市鹿城区にある公園のテントで毎日欠かさず、物ごいやゴミ拾いに“一杯のおかゆ”を提供してきた。当初、来訪者は1日数十人だったが、景気悪化とともに地方出身の失業者が加わり、今は約600人だ。

 お代わりをしていた安徽省出身の陸建青さん(27)は「2か月も職がない。食事は1日ここでの1回だけ。夜は駅で寝るしかない」と話した。行列には20〜30代の若者も目立つ。

 11月末、「社会の温情」としてメディアが報道。ネットでは“一杯のおかゆ”に関する専用サイトも設けられ、たちまち「全国に広げよう」と支持が広がった。一方、ネット上では「貧困者救済は本来、政府の仕事」「腐敗した官僚は見習うべきだ」などの批判も出始めた。おかゆ配給の現場でメディア対応をしていた鹿城区の宣伝担当者は、「これは純粋な民間による慈善行為。金融危機とは一切関係がない」と釈明に必死だった。

 (温州で 加藤隆則)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081222-00000076-yom-int