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2008年12月22日(月) 19時40分

策士、策におぼれた…バレンタイン監督の内情“暴露”産経新聞

 まさに青天の霹靂(へきれき)だった。

「球団に私を監督職から辞職させようと思っている人がいる。フロントから直接『辞職すべきだ』といわれたんだ」

 9月2日、西武戦(千葉)の試合前。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)日本代表監督への就任意欲を問われたバレンタイン監督が突然、自らの進退を語り始めた。今季は4年契約の3年目で来季続投は既定路線。平穏なロッテに、お家騒動が勃発(ぼっぱつ)した。

 発端は7月19日のバレンタイン監督と瀬戸山隆三球団社長の会食だった。指揮官は2010年以降の長期契約を希望。球団は来季続投を要請した上で、10年以降の契約は来季改めて話し合うという姿勢を崩さなかったという。会食中はその話題でヒートアップ。言葉の行き違いもあり、誤解が生じたとみられる。

 その1カ月半後、ボビーによる内幕“暴露”。球団は即日「来季続投の方針に変わりない」と断言したが、10年以降については「今は考えられない」と慎重だった。赤字経営の球団にとって、5億円という高額年俸はネック。安易に契約延長はできないという意思が感じられた。一方、バレンタイン監督は翌3日、2年前に半永久的な監督要請を受けたことも明かし、「生涯(ロッテ監督)と受け止めたが、ネコの生涯のことなのか」と不満をぶつけ、両者の関係は険悪になった。

 確かにボビーの交渉術は巧みだったと思う。3年契約の2年目で日本一となった05年オフ。米大リーグからの監督就任要請をちらつかせ、06年からの4年20億円の大型契約を勝ち取っていた。ロッテで初めて指揮を執った1995年、10年ぶりのAクラスながら解任され、ファンの非難が球団に集中したことを覚えていた。今年の発言は5位ながら2位と1・5ゲーム差という時期。WBC日本代表監督就任の声も出ていた絶好のタイミングだった。

 だが、今回はうまくいかなかった。ボビーはファンを味方につけ交渉を優位に進めようとしたが、反応は薄かった。3シーズン優勝から遠ざかり、今季も采配の限界を感じる場面があったが、ファンもそれを感じ取っていたようだ。結果的に指揮官はファンの反応を読み間違えた。

 結局ロッテは4位でクライマックスシリーズ(CS)進出を逃し、10月3日の最終戦、バレンタイン監督は「(辞職勧告発言は)あまりよく覚えていない」とトーンダウン。ボビーは賭けに敗れた。

 そして12月21日、球団は「成績にかかわらず、バレンタイン体制は来季限り」と発表。決別を確定させた。あの内情“暴露”がなければ、この時期に球団が発表に踏み切ることはなかったと思えてならない。「策士、策におぼれた」という感じがした。(神田さやか)

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