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2008年12月21日(日) 13時00分

投資のプロたちが次々と騙された「米史上最大規模の投資詐欺」の手口とはMONEYzine

 世界金融危機で金融業界が混乱に陥っているなか発覚した元ナスダック会長のバーナード・マドフ容疑者による巨額詐欺事件の被害が深刻だ。

 現在わかっているだけでも国内証券大手の野村ホールディングスや仏銀大手のBNPパリバ、英HSBCホールディングス、王立スコットランド銀行、スペイン銀大手のサンタンデール、さらにイタリア、スイス、オランダなど各国の金融機関に多額の損失が発生している。また個人では米映画監督のスティーヴン・スピルバーグ氏や映画プロデューサーのサム・イングルバート氏など少なくとも数百人の富裕層や投資家が騙されてしまったという。

 投資のプロである一流の金融機関や普段から勧誘や誘惑に慣れているはずの富裕層がどうして騙されてしまったのか。マドフ容疑者の詐欺の手法は奇をてらったものではない。その手口とは年間平均10%という高利回りを謳い投資家から金を集め、会員となった投資家に新規顧客を紹介してもらうというもの。いわば典型的な「ネズミ講」だ。マドフ容疑者は集めた資金をそのまま配当に回し、また顧客を紹介してもらうということを繰り返していた。実際にはファンドは多額の損失を抱えており、その巨額損失を投資家から集めた資金でひそかに穴埋めしていたのだ。

 ネズミ講による詐欺は日本はもちろん世界中に古くからある犯罪で、誰もがそう簡単にひっかかる手口ではないが、職業柄お金に携わる慎重なプロたちが一様に騙されてしまったのにはある理由があった。それがマドフ容疑者の「元ナスダック証券取引所の会長で伝説的ファンドマネージャー」という華麗な経歴だ。

 米国ニューヨーク州生まれのマドフ容疑者は米店頭市場ナスダックの運営会社会長をはじめ、証券業界の要職を務め、その実績と幅広い人脈によってウォール街の重鎮として知られていた。また毎年多額の寄付を行いチャリティー活動にも熱心なことから同容疑者を信用して資産運用を任せていた投資家も多かった。

 だが詐欺被害に詳しい横張清威弁護士(みらい総合法律事務所)は同容疑者の手口をこう説明する。「権威を利用することで投資家を安心させるのは詐欺ではよくある手口。加えて巧妙なのは最初に配当を与えていること」。つまり最初に配当によって儲けさせることで投資家の欲を煽り、多額の資金をむしり取っていたのだ。ファンドの好調を装う同容疑者から配当を受けていたことでプロたちも油断してしまったのかもしれない。

 米史上最大規模の投資詐欺となった今回の詐欺被害は総額で500億ドル(約4兆6000億円)にも達するといわれ、被害はさらに拡大する可能性がある。

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