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2008年12月21日(日) 22時23分

きしむドイツ大連立政権、1年後の総選挙へ独自色読売新聞

 【ベルリン=中谷和義】ドイツの保革2大政党、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と社会民主党(SPD)による大連立政権に、きしみが目立ち始めた。

 来年9月の総選挙に向け両党とも独自性を発揮する必要に迫られ、経済政策や外交施策にも影響が及んでいるものだ。

 メルケル首相率いる保守のCDUが、中道左派・社民党の首相候補シュタインマイヤー外相を議会で攻撃したり、世界的な金融危機への対応が遅れたりと、ドイツの対外信用をも損なう事態となりつつある。

 「バカげている」「根拠がない」「腹立たしい」──今月18日に連邦議会で開かれた調査委員会で、シュタインマイヤー外相は、CDUのジークフリート・カウダー委員長らの執拗(しつよう)な質問に、いらだちを隠さなかった。

 調査委が取り上げたのは、2003年のイラク開戦前に独情報機関がバグダッドで集めた情報を米軍に提供し、イラク戦争に協力していた疑惑。

 外相は当時、シュレーダー政権の首相府長官として情報機関を統括する立場にあった。CDUの追及には、開戦に反対しながら裏では米軍の戦争遂行に協力した外相の「二枚舌」を有権者に印象づける狙いが透けて見えた。

 2大政党間のきしみは、緊急課題である景気対策にも影を落としている。

 個人消費を促すため、英国は11月、付加価値税を17・5%から15%に引き下げると発表、欧州連合(EU)の執行機関、欧州委員会も同様の措置を取るよう加盟国に勧告したが、ドイツは黙殺した。

 背景には、両党それぞれの党利党略があったとされる。CDUは、減税を選挙戦の武器として温存したく、かたや社民党内では、減税を見送って社会保険料を引き下げ、低所得者にアピールすべきだとの意見が大勢を占めた。

 メルケル首相は、EU全域での景気刺激策にも「規制緩和など財政出動なしにできることは多い」と反対した。最大の経済国ドイツが過大な負担を迫られ、他国のために使われるのを嫌ったのが本音と見られるが、こうした姿勢は他国の不興を買い、メルケル首相は「マダム・ノー」と呼ばれ始めた。

 今月8日には、英仏首脳と欧州委が“ドイツ抜き”で景気対策を協議する一幕もあり、シュタインマイヤー外相は「ドイツの不在はよくなかった」と首相を暗に批判した。

 ドイツで戦後最初の大連立となったキージンガー政権(1966〜69)は、非常事態法を成立させるなど総与党体制で大胆な施策を実行した。

 対照的に、発足から丸3年が経過したメルケル政権では、議会支配を盾に必要な行動を先送りする、大連立の弊害も目立ち始めた。

 ドイツでは来年、総選挙に加え大統領選、欧州議会選、5州の議会選が行われ、「選挙年」となる。社民党のフランツ・ミュンテフェリンク党首は19日付の党員向け書簡で、「わが党だけで首相府をとろう」と檄(げき)を飛ばし、今後の対立激化を予告した。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081221-00000042-yom-int