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2008年12月21日(日) 21時40分

<派遣切り>真っ先に影響、外国人労働者 浜松や広島で訴え毎日新聞

 自動車産業や電機産業を中心に派遣・請負労働者といった非正規社員の人員削減が続くなか、日系ブラジル人ら外国人労働者が多く住む浜松市や広島市で21日、雇用継続を訴えるデモや集会、相談会が開かれた。非正規社員のうち、言葉が不自由なため真っ先に影響を受ける外国人労働者。突然、理由も不明確なまま訪れる「派遣切り」の実態を訴えた。【平林由梨】

 浜松市中区の公民館ではデモに先立つ集会が開かれ静岡、愛知、岐阜県などから外国人を含む約200人が参加した。「企業は雇用を守って」「政府は雇用の創出を」などを盛り込んだアピールを採択、今回の不況で職を失った外国人労働者が状況を説明した。その後、JR浜松駅周辺を約1時間にわたりデモ行進した。

 仕事を探しに長野県から浜松市に来たという日系ブラジル人のセイチ・トメさん(43)は、10月からJR浜松駅前の地下道で生活している。「ブラジルの人材派遣会社にあと70万円を送金しなくてはならないので、帰れない。何でもいいから仕事がほしい」と訴える。また、12月に入り、勤務先の静岡県湖西市の自動車部品工場で同僚40人が解雇されたというブラジル人のフェレイラ・ジルさん(32)は「自分はまだ仕事があるが、いつ解雇されるか分からない。そのときに備えて労働組合に入った」と話す。

 13歳の息子がいるブラジル人のメロウ・ブラジミルさん(36)は1カ月前、同県磐田市の自動車部品工場で、夫婦そろって雇用を打ち切られた。「帰国するのは簡単。でも今、ブラジル人社会に自分が何か役立てないか。もう少し日本で頑張ろうと思っている」と話していた。

 ◇広島では相談会 行政支援も言葉の壁

 広島市安芸区で21日「派遣切り」などで職を失った日系南米人の相談会が開かれた。「日本が人手不足だった時、呼び掛けに応じて来日したのに。日本政府も会社も無責任だ」と憤る声も聞かれた。

 組合員約150人のうち約100人が外国人労働者という同市の労組「スクラムユニオン・ひろしま」が、ポルトガル語が出来る組合員を配置して公民館で開いた。相談に訪れたのは15人で、大半が自動車メーカー、マツダ(本社・広島県府中町)など自動車産業の下請けや関連会社で派遣社員として働いていた。

 15人は大半がブラジル人でペルー人もおり20〜50代。片言の日本語で「仕事がなくなったら、どう暮らせばいいのか分からない」などと訴えた。派遣会社から説明がなく「雇用保険を受け取れるのか」と聞く人や、派遣会社から労働契約書を受け取っていない人もいた。

 同県には約5200人の日系ブラジル人や日系ペルー人らがいる。「派遣切り」対策で行政は12月から、離職者向けに住宅あっせんなどの支援を始めたが、応募のビラが読めないなど言葉の壁があり外国人労働者まで届いていないという。

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