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2008年12月21日(日) 20時07分

<米死刑制度>4人殺害で回避 陪審員一致せず…ジョージア毎日新聞

 【ニューヨーク小倉孝保】米ジョージア州アトランタで裁判官など4人を殺害したとして殺人など計54件の罪に問われた男に対し、地元高裁の陪審員(12人)が死刑を回避する評決を下したことが議論を呼んでいる。同州では死刑評決には陪審員による全会一致の賛成が必要だが、3人が反対。検察側は「このままではどれだけ人を殺しても死刑にならない」とし、州法改正を議会に働きかける考えを明らかにした。

 男はブライアン・ニコルズ被告(37)。05年3月、婦女暴行の罪で出廷中、警備員から奪った銃で裁判官とジャーナリストを射殺、逃亡の際に保安官ら2人を殺害した。その後、逮捕、起訴され先月7日、陪審員が有罪の評決を下した。検察側が死刑を求める一方、弁護側は「死刑によって社会は良くならない」と主張し、陪審員は死刑が妥当かどうかの審議に入った。

 結局、9人は死刑を支持したが、3人は仮釈放のない終身刑を主張。裁判長が12日、これ以上話し合いを続けても全陪審員の意見が一致することはないと審議を打ち切り、陪審員は終身刑の評決を下した。最終的に裁判長が13日、仮釈放のない終身刑を言い渡した。陪審員は評決直前、4日間計30時間にわたって集中審議した。

 この評決を受け地元検察は「陪審員の中に、いかなる場合でも死刑に反対する人がいた。これでは公正な裁判ではない。州法を改正するよう議会に働きかける」と述べた。具体的には、陪審員10人の賛成で死刑の評決が出せるよう法改正を求めるという。

 同州では陪審員を選ぶ際、検察、弁護双方が陪審員を尋問し、適当でないと考えられた者を陪審員から外すよう求めることができる。今回の裁判では、陪審員全員が「死刑についても検討する」と宣誓している。検察側は、陪審員の中に死刑自体に反対した人もおり宣誓に反する、と主張している。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081221-00000042-mai-int