記事登録
2008年12月20日(土) 13時40分

米自動車メーカー崩壊の理由が日米比較で明確に 問題は「時給6000円超の高コスト体質」MONEYzine

 金融危機の直撃を受けたビッグスリー(米国の三大自動車会社)が深刻な経営危機に陥っている。資金繰りが悪化したビッグスリー側は政府に即時支援を必死に求めているが、このまま救済されなければ年末にも運転資金が枯渇する可能性がある。米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は17日、経営危機に陥っている米ゼネラル・モーターズ(GM)とクライスラーが合併協議を再開したと報じた。これは米政府に対し再編の取り組みをアピールし、資金支援を引き出すのが狙いだが、つなぎ融資を受けられるかどうかはいまだ不透明だ。

 ビッグスリー3社が来年に破綻した場合には、米国内では初年度に300万人近い失業者が発生するともいわれており被害は甚大になるが、かつて隆盛を誇った米自動車メーカーがなぜこれほどの危機に陥ってしまったのだろうか。

 今月9日、米ニューヨーク・タイムズ紙はビッグスリーの凋落の原因は日本メーカーに比べて車が売れなくなったこと、また従業員の高賃金が原因だと報じた。フォードの従業員の平均賃金は時給71ドル(6400円)で日本メーカーの49ドル(4400円)と比べると3割も高い水準にある。この時給には基本賃金だけでなく保険や税金などの福利厚生にかかるコストも換算されているが、とりわけ問題視されているのが「レガシーコスト」と呼ばれる、退職者向けに企業が支払い続ける年金や保険などといった金銭的負担だ。

 米国では公的年金や退職者医療制度が十分に整備されておらず、自動車業界や鉄鋼業界などの大企業は政府の補完役として従業員の年金や医療保険等の福利厚生を負担してきた。従業員の賃金コストが高くても企業の収益がそれを賄うほど大きければ問題はないが、近年では販売が落ち込んでおり、これまで維持してきた経営も成り立たなくなっている。

 その結果、ビッグスリーの一角であるGMの自動車一台あたりの従業員の医療保険費用は1500ドル(13万5000円)に達しているともいわれており、トヨタの201ドル(1万8000円)と比べ負担があまりにも大きい。今回たとえビッグスリーが政府からつなぎ融資の提供を受けることができたとしても、今後再生できるかどうかはレガシーコストなどをどう清算し、既存の高コスト体質から抜け出せるかにかかっている。

【関連記事】
GMの倒産を恐れるトヨタ 支援する際のネックは「時給7000円」の高賃金
「自ら没落したGM」と「ノー天気なエコノミスト」
米ビッグスリーCEOらジェット機乗り付けで全米から非難続出
金融危機を打開できるか トヨタが描く「復活のシナリオ」

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081220-00000000-sh_mon-bus_all