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2008年12月20日(土) 22時09分

<損害>M&A算定で神戸の元会社社長ら 三井住友銀提訴へ毎日新聞

 M&A(企業の合併・買収)で会社を売却する際、価格算定が不適当だったため不当に低い価格で売るはめになったとして、神戸市の元会社社長の男性(60)ら元株主15人が、売却を仲介した三井住友銀行(本店・東京都)に、約1億4700万円の損害賠償を求める訴訟を近く大阪地裁に起こす。過去に工場を移転した際、新工場の帳簿上の価格(簿価)を時価より低く設定したが、転売時には時価が適用されることを見過ごしたと指摘している。M&Aを巡り仲介の銀行の責任が問われるケースは珍しい。

 訴状などによると、元社長は、筆頭株主で社長を務める精密部品製造会社(神戸市)を売却しようと07年6月、売却額算定や売却先のあっせんなどを依頼する「アドバイザリー業務契約」を同銀行と締結した。銀行は土地・工場の簿価などを基に売却額を4億円と算定。元社長らは今年4月、大阪府内の製造会社に全株式を同額で売却し、子会社になり、銀行側には2650万円の報酬を支払った。

 しかし、直後に監査法人が「時価とかなりの差がある」と指摘。元社長らが調べたところ、工場が時価より約9300万円低く見積もられるなど、付属設備や機械などを合わせて計約1億2000万円低く算定されていた。

 簿価が時価より低いのは、1988年に工場を移転した際、節税のため新工場の帳簿上の価値を下げる「圧縮記帳」という税法上の特例措置を適用したためで、転売時には時価取引が通常だという。

 元社長は「銀行の助言なので間違いないと思った。算定額が時価よりもこんなに低いと知っていれば、同意しなかった」と憤っている。元社長の代理人は「工場の簿価と時価がかけ離れていることは、M&A担当者なら当然認識し説明する義務があるのに怠った」と指摘。同行広報部は「個別案件については答えられない」としている。【近藤希実】

 中塚晴雄・福岡大准教授(投資銀行論)の話 不動産評価は銀行の基本業務の一つ。常識的には、簿価と時価の差については原因を含め調査すべきだ。もし、気付かなかったり、調査しなかったとしたら、銀行がミスをした可能性がある。

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