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2008年12月20日(土) 20時50分

消えぬ財政規律後退の不安 予算財務省原案産経新聞

 「歴史的な予算編成であると同時に、できたものが歴史的だ」。中川昭一財務相は20日、閣議後の会見で、今回の予算をこう総括した。一般会計総額、一般歳出がともに過去最大となり、新規国債発行額は30兆円の大台を突破した。予算編成のプロセスも大きく見直され、予算の無秩序な拡大を防ぐ概算要求基準(シーリング)も事実上骨抜きにされた。中川財務相の言葉通り、確かに異例ずくめの予算となった。

 背景にあるのは、予想を超える景気後退だ。政府は10月に成立した第1次補正予算から第2次補正、緊急対策と、間断なく景気下支え策を出し続けてきた。トヨタ自動車ですら赤字に転落する可能性が高まり、非正規雇用者の契約解除が新たな社会問題となっているなかで、経済を支えられるのは財政しかないといっても過言ではない。中川財務相が「経済や雇用の悪化を食い止め、世界に先駆けて(景気を)上向きにする目標でつくった」というように、21年度予算でも景気対策を最優先する姿勢を鮮明にした。

 一方で、景気後退は税収の落ち込みも招いている。税収が乏しい中で積極財政に打って出るため、いわゆる「埋蔵金」と呼ばれる財政投融資特別会計の積立金や余剰金を財源としてひねり出した。それでも足りない分は国債の増発で補わざるを得ず、国と地方の長期債務残高はとうとう800兆円の大台を突破する。予算のつじつま合わせは、すでに限界まで来ている。

 政府が目標としてきた平成23年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化も事実上、有名無実化しており、政府は財政再建の大きなよりどころを失ったといえる。

 今回の予算編成で、与党は次期衆院選をにらみ、歳出拡大を正当化した。今後も景気の下支えを名目に、なし崩し的に財政規律が後退する懸念は消えていない。財政健全化に向けた新たな道筋を示さない限り、日本を財政破(は)綻(たん)に導いたきっかけとして、今回の予算は「歴史的」になりかねない。(石垣良幸)

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