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2008年12月20日(土) 19時48分

大盤振る舞いの予算案 暮らしどうなる? アソウさん一家の場合産経新聞

 20日内示された平成21年度予算の財務省原案は、一般会計総額が過去最大の88兆円台に達し、大盤振る舞いになった。景気後退の影響が深刻になる中、暮らしはどう変わるのか。アソウさん一家の暮らしをみてみよう。(白抜き数字の注釈は別項で)

 「こりゃあ、ちょっと恥ずかしいなあ」。赤いチャンチャンコと赤いずきんを身につけ、タロウさんが居間に入ると、家族から歓声と笑い声が上がった。きょうはタロウさんの還暦祝い。息子や孫たちに「ぴったりだ」とからかわれ、照れ笑いした。

 東京に住む長男のショウイチさんが東北の実家に帰省するのは久しぶり。「そっちの暮らしはどうだ」とタロウさんが声をかけた。

 「景気〔1〕が悪くて大変。ボーナスも大幅カットだよ。どこかに埋蔵金〔2〕でも埋まっていないかなあ」

 定額給付金の支給を受けたがボーナスの減額を考えると焼け石に水だ。景気後退で日本を代表するトヨタ自動車が赤字になりそうだとか、ソニーは1万6000人の人員を削減するとか暗いニュースばかり。雇用問題〔3〕は人ごとではない。

 「うちの会社もリストラを考え始めたようだ」と心配顔なのは、大阪に住む二男のカオルさん。遠路はるばる家族4人を乗せてマイカーで帰省した。

 高速道路料金の引き下げ〔4〕で、新幹線よりも安上がりになったからだ。エコカー減税〔5〕で安くなるのを機会に燃費のいい車に買い替え、さらに節約しようと考えている。

 3人兄弟で一人実家に残るヨウイチさんはまだ大学生だ。バイトでためたお金を元手に株式投資〔6〕を始めたが、このところの株価下落で、「せっかくのバイト代が台無しになった」と嘆いた。

 景気の悪い話ばかりの3人にタロウさんが割って入った。

 「実は引退を考えている。その前に後継者を決めておきたいんだ」。還暦を機に経営する和食レストランの跡継ぎを決めるつもりだった。後継者問題〔7〕は、タロウさんだけの悩みではない。

 取引先のジミン食品は優秀な後継者が見つからず、1年ごとに2回も社長が交代する始末。前の2人はオザワ商事との競争に耐えられず、途中で仕事を投げ出してしまった。つきあいの深い洋食レストラン「オバマ亭」が、47歳の若手社長を抜擢(ばつてき)したことが、タロウさんはうらやましくてならない。

 だが、「無理だよ」と3人は口をそろえた。

 ショウイチさんは住宅ローン〔8〕が残っているうえ、子育て〔9〕に忙しい嫁に頭が上がらない。カオルさんも肌の合う関西を離れる気はない。「ヨウイチ、お前が跡を継げ」と2人が声をそろえると、ヨウイチさんは「待ってよ! 僕にも仕事を選ぶ権利がある」と食ってかかった。

 「こんな話急にされても、3年後に改めて考えようよ」と3人。消費税率引き上げ〔10〕と同じように3年後の約束だけで、何とかこの場を切り抜けようという作戦だ。

 タロウさんの顔がみるみるチャンチャンコと同じ真っ赤になった。「そんなに継ぎたくないのか!」

 怒り出したタロウさんをなだめようと妻のユウコさんが割って入った。

 「あなたKYねえ」

 「なんだ、それは」

 「『空気(K)が読(Y)めない』という意味よ。せっかくのお祝いなのに」

 「今は、首相みたいに『漢字(K)が読(Y)めない』だよ。父さんの場合は、さしずめ『子供(K)の気持ちが読(Y)めない』だね」

 タロウさんも負けずに言い返した。

 「いや違う。『還暦(K)の親にもっと優(Y)しくしろ』だ」

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